スタンガンは「安全な制圧方法」とはいえない 警察が使用したケースで全米1005件の死亡例
「現場に到着した時、5150というのは聞かなかった」と、モタ氏は言った。
トムさんは、テーザー銃で撃たれたあと、心室細動と呼ばれる脈拍が不規則になる症状を起こし、7日後に死亡した。検死官は、トムさんの心臓には20年前の覚せい剤使用で悪化したとみられるものも含め、多数の問題があったとした。
「私の人生はもう元には戻らない」
病院に技術スタッフとして勤務していたトムさんは、子どもたちが幼いころには頻繁にキャンプやハイキングに連れて行く優しい父親だったと、妻のナンシー・シュロックさんは語る。「彼は、私の最愛の人で、子どもの父親でもあった。私の人生はもう元には戻らない」
精神疾患など衰弱患者に対するテーザー銃使用に関する研究は、ほとんど行われていない。倫理上の制約が一因となっていると、スタンガンについて共同研究を行ったスタンフォード大学・刑事司法センターのジェナ・ニューシェラー氏は指摘する。
「精神疾患者や、薬物の影響下にある人、心臓疾患がある人や妊婦にたいして、実際どのような影響を与えるか分かっていない。彼らに実験してみるわけにもいかない」と、ニューシェラー氏は言う。
スタンフォード大の研究によれば、テーザー銃は、あるグループに対して使われるべきではないとしている。
約150件のテーザー銃の使用事例を分析したこの研究では、「薬物やアルコールの影響下になく、妊娠しておらず、精神疾患を患っていない健康な人に対して、認められた部位に5秒間ショックを与える」場合に限り、この銃の使用は安全だと結論付けている。