中国・王毅外相の発言が北朝鮮を挑発した 金正恩向け「裏メッセージ」発信が不覚

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王氏にしてみれば、中国に過大な期待を寄せられても困るという中国側の考えを、欧米メディアを通じてトランプ政権側に対して、「まだわからないのか、まだなのか」と言わんばかりに、政治外交的に伝えているつもりかもしれない。しかも、王氏はそうすることによって、欧米メディア戦略にも成功していると思っているのかもしれない。

それはとんでもない誤解である。成功どころか、まったく逆の不覚の大失敗とみていい。というのは、中国の王毅外相の発言は、トランプ政権に向けられているだけでなく、北朝鮮の金正恩政権へのメッセージでもあるからだ。

金正恩氏にしてみれば「それじゃ、どんどんやってもいいんだよな」と、ひたすら挑発をエスカレートさせている可能性なきにしもあらず、である。

この外交上の「裏メッセージ」は、王氏のような中国のエリート知識人の常識ではないようだが、欧米のみならずアジアを含む世界の常識と言っていい。トランプ大統領も百も承知だろう。ところが、中国の王氏は、そうした欧米メディアの常識をわきまえていないようだ。

わかりやすい例を挙げよう。ニューヨークのブロードウェーでも東京シアターでも、舞台上で登場人物Aが登場人物Bに向かって、「自分たちはCに対して影響力がない」と執拗に繰り返せば、同じ舞台上にいる登場人物Cは、「しめしめ」と観客に向かって語り掛けるようになる。王氏は世界のひのき舞台で、その登場人物Aになってしまっているのである。

そのことは、トランプ大統領をイラつかせているだけでなく、習主席の足を引っ張ることにもなる。

日本通ではあっても米国通でなない

王毅氏は日本語が堪能で、駐日中国大使を務めたことから、日本でもその名は知られている日本通だ。残念ながら、外相になってからは、反日派の急先鋒とメディアで評されることが多くなっている。

さて、王氏がトントン拍子で出世し、中国外交の中軸の人脈に入れたのは、超名門であるうえに、多くの人々に慕われる夫人の銭韋氏のおかげである。銭氏は、とびきりハンサムだった若き日の王氏に一目ぼれしたという。

銭氏の父親は、周恩来元首相の外事秘書を務めていた。その関係で王氏は抜擢され、出世階段を上った。一時期、王氏は米国で客員研究員になっているが、どちらかと言えば、米国通ではない。その証拠に、米国に強い外交官に出世コースの先を越された時期もある。

日本通ではあっても、中国エリートの常として、メディア通でなく、しかも米国通でないことは、「裏メッセージ」について、欧米の世界では常識であることを、王氏は十分に理解していないことでも明らかだ。

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