「大人の作業を避ける子ども」を育てる環境 「アダルティング」がもてはやされるワケ
アメリカで昨年あたりから、「Adulting(アダルティング)=大人化、大人としての自覚を持ち始めること」という言葉が注目されている。昨年、SNSで爆発的な人気となった「#adulting」は、たとえば、「夜中に洗濯/皿洗い/トイレの掃除をする」ことだったり、「両親に将来の計画を尋ねられること」だったりする。
『メリアム・ウェブスター』辞書によると、「アダルティング」とは、大人のように振る舞うことであり、とりわけ、日常的に、頻繁に、大人であればそうすると期待されることを行うことである。
多くのミレニアル世代にとって、こうした作業が「アダルティング」と呼ばれるようになった背景には、たとえばテクノロジーの進化やシェアリングエコノミーの発展によって、面倒な作業を自ら行う機会が減っていることや、ハイテク企業を中心に洗濯や買い物といった作業は「外注」できること、そして、そもそもミレニアル世代の親が子どもを甘やかしてきたことなどがあると指摘されている。
大手企業も#adultingを利用
この言葉は2013年に、「adultingblog.com」というブログを運営するジャーナリストのケリー・ウィリアムズ・ブラウン氏が、『Adulting: How To Become a Grown-Up In 468 Easy(ish) Steps(アダルティング:大人になるための468の簡単(っぽい)ステップ)』という書籍を出したことでまず注目された。この本は、自立的な大人として働こうとするミレニアル世代に向けられたものだった。
そして、昨年にはアダルティングという言葉が爆発的に使われるようになり、米弁護士協会は、英語における「最も創造的な単語構成」としてアダルティングを選出。その結果、ネット調査会社ブランドウォッチ社によると、金融企業や食品企業、そして小売企業に至るまで、多くの企業が商品を販売するために、「#adulting」を利用するようになったという。
アダルティングは、ミレニアル世代が飛びついた無害で風変わりな流行のように思えるかもしれない。しかし、ベン・サッセ上院議員のように、この流行を危惧している親もいる。彼は著書『The Vanishing American Adult: Our Coming-of-Age Crisis – and How to Rebuild a Culture of Self-Reliance(消えゆくアメリカの大人:成人危機、そして自立の文化を再構築する方法)』の中で、この傾向にまつわる、自身の驚くべき体験について書いている。