「大人の作業を避ける子ども」を育てる環境 「アダルティング」がもてはやされるワケ
それは、サッセ上院議員がネブラスカ州ミッドランド大学の学長だったときのことだ。ある年、彼はキャンパス内にあるクリスマスツリーの不自然さに気づいた。そのツリーは、枝に簡単に手が届く7~8フィートの高さまでは飾り付けられていた。
が、それより上にはオーナメントがなく、ツリーは青々した状態のままだった。学生たちに理由を尋ねたところ、彼らは「装飾品をてっぺんに取り付ける方法を見つけられなかった」と答えたという。はしごを探そうという考えも、自発性も、彼らにはなかったわけだ。
「この問題は、脳の欠陥に関することではまったくなかった。それは意思の問題、当事者意識の問題だった。作業を完了させることに対して関心もなければ、そうした経験も持ち合わせていないということだった」とサッセ上院議員は書いている。
自立心を植え付けることが難しくなっている
同上院議員が、気がついたのは、学生はきつい作業を完遂した経験が少ない、あるいはないために、「現実世界の問題を解決しなければならないときに、奇妙なほどぼんやりする」ように見えることだった。
こうした子どもが育つ背景には、最新のテクノロジーに容易にアクセスできたり、子どもが両親が働いている様子を見たことがなかったり、「子どもに自立心を植え付けることを難しくしている、子育てにおける文化的記憶喪失」があると指摘している。ちなみに、この「文化的記憶喪失」が起こるのは、10~20歳くらいまでの子どもたちの「柔軟性の権利意識」を育む際の甘やかしが原因だとしている。
実際、サッセ上院議員が大学の学長をしていた時には、子どもの成績について教授に文句の電話をかけてくる親や、学生寮で子どもが少しでもいい部屋に入れるように寮長と交渉する親や、ルームメートとの紛争に介入してくる親が少なくなかったという。