「大人の作業を避ける子ども」を育てる環境 「アダルティング」がもてはやされるワケ

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さらに夫妻は、子どもたちの大学の授業料も払わないという結論に至った。その結果、現在23歳と18歳になる子どもたちは、両親に頼ることなく、自らの意思で将来を決められる大人に育ちつつあるという。

一方、ミレニアル世代のミカ・キルシャーさんは、「気がそぞろで漂流し、当事者意識がない。柔軟だが、権利意識が強い」とするサッセ上院議員の決めつけはおかしいと考えている。彼女の見解では、現在の世の中は、自分の両親が育った時代よりもずっと厳しい。「大学に入るにも激しい競争を勝ち抜かねばならず、その競争によるストレスは以前よりずっと膨らんでいる」(キルシャーさん)。

実際、高校や大学の同級生の多くは、学校の宿題やバイト、キャリアプランニングや将来のおカネのやりくりまで、複数のタスクを抱えながら、非常に忙しい生活を送っていたという。しかも、同級生の多くは自発的で、誰もが積極的にインターンシップに申し込んだり、将来の計画を立てたりしていた。

世代論はいつの時代も陳腐なものだ

キルシャーさんの見方では、ミレニアル世代は適応力があり、現実的で勤勉だが、同時に人生を楽しく過ごすすべを知っている。彼女は、自分自身や友人を「要領がよくてタフ、献身的で頭がよく、世界で何が起こっているのかを意識し、世の中に積極的に関与して楽しんでいる」と表現した。

が、これはサッセ上院議員が、上昇志向の強い両親世代は、子どもに「欲張りで、自立し、自給自足できて、奉仕することができる」人間になってほしいといっているのと、本質的に大きく変わらないのではないだろうか。

そう考えると、世代論はいつの時代も陳腐なものなのかもしれない。かのソクラテスでさえ、若者を軽蔑していたというのだから。こうした中、私たちが真に問いかけるべき疑問は、子どもたちが成功する「大人」になるために、大人が何をできるか、ということだろう。

これに対して、サッセ上院議員は、そのカギを握るのは、仲間の圧力に屈せず、消費に抵抗し、「必要性」と「欲求」の違いを知る力を身に付けさせることだとしている。一方、エリンさんは、子どもたちに「NO」という言葉を教えることだと説く。「NOという言葉は強い言葉で、言う人に力を与える。その言葉によって、子どもたちは物事を終わらせる力を身に付ける」(エリンさん)。

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