私の分析でも、中国と欧州の景気は、もうしばらくは現状のような状況が続くのではないかと思います。特に中国は、2013年4~6月のGDPが7.5%増まで鈍化しました。そのうえ、習近平政権がシャドーバンキングの問題を重く受け止め、金融の引き締めに動いています。この影響で企業活動が停滞し、中国の景気はさらに悪化する懸念があるのです。
そういう意味でも、キヤノンはこの先、円安の恩恵を受けたとしても、当初の予想より売り上げが伸びないだろうと考えたのでしょう。キヤノンの業績を見極める際は、中国や欧州経済の動きにも注意する必要があります。
ただ、キヤノンは財務内容が非常にいい会社ですから、安全性には全く問題はありません。貸借対照表から、会社の中長期的な安全性を示す「自己資本比率(純資産÷資産)」を計算しますと、69.3%になります。これは抜群の数字です。少々業績が悪くなったからといって、会社が潰れるようなことはないでしょう。
安売り戦略成功でも、円安で大ダメージ受けた吉野家
一方、円安による悪影響に苦しんだのが吉野家です。2013年3~5月の業績を見てみましょう。損益計算書から「売上高」を見ますと、399億円から425億円まで伸びていますね。これは、4月18日から牛丼並盛りを380円から280円に値下げした効果が出たからです。主力商品の値下げをしたものの、来店客数の増加などで売り上げを伸ばしたのです。吉野家の安売り戦略は売り上げを伸ばすという点では成功したと言えるでしょう(同社の損益計算書参照)。
しかし、円安が進んでしまったために、牛肉や豚肉など海外からの仕入れ価格が上昇し、「売上原価」も138億円から158億円まで増えてしまいました。これは吉野家の予想を超えていたと思います。
今年2月、米国産などの牛肉に対する輸入規制が緩和されました。それまでは、BSE(牛海綿状脳症)対策のために輸入できる牛の月齢は20カ月以下に制限されていたのですが、規制緩和によって月齢30カ月以下に拡大されたのです。
これは吉野家にとって非常に喜ばしいニュースでした。「月齢が高い牛のバラ肉のほうがおいしいうえに、仕入れ価格も抑えることができる」という期待が高まったのです。吉野家が牛丼並盛りを値下げしたのも、これが背景にありました。
しかし、残念ながらもくろみは外れてしまいました。値下げ戦略自体は成功したのですが、円安で輸入価格が想定より上がってしまったのです。さらに値下げを告知するために広告や宣伝費を増やしたことで、「販売費及び一般管理費」が257億円から274億円まで増えてしまいました。
その結果、「営業利益又は営業損失(△)」が、3億円から7億円の赤字になってしまったというわけです(同10ページを参照)。
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