アベノミクスに騙されるな,デフレが日本救う 異色のエコノミスト・増田悦佐氏に聞く(上)

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 5月23日に日経平均株価が1143円の大暴落を演じて以降、日本の株式市場の景色は一変した。アベノミクスへの期待感は剥げ落ち、株価は今なお、日本経済の本当の実力を測りかねているかのようだ。 
 一方、この間、中国のシャドーバンキング(影の銀行=銀行を介さない金融取引)問題が浮上するなど、外部環境は激変しつつある。中国は景気減速感も強まり、シャドーバンキングによる金融バブルが崩壊すれば、世界経済や株式市場に与える影響は、米国のサブプライムローン問題やリーマンショックに匹敵するとの見方さえ出ている。
 従来から自身の著書などで、アベノミクスやリフレ政策を批判し続けてきたほか、このほど『中国自壊――賢すぎる支配者の悲劇』(東洋経済新報社)を刊行するなど、中国情勢にも詳しい異色エコノミストの増田悦佐氏に、アベノミクスの今後と株式相場の見通し、中国のシャドーバンキング問題の行方などについて聞いた。
参議院選も自民党の圧勝に終わりそうだが、アベノミクスは続くのか(昨年の衆院選、撮影:尾形 文繁)

――増田さんは、インフレと円安誘導を目指すアベノミクスを一貫して批判し、円高とデフレこそ日本にとって望ましいと主張しています。

 日本ではかれこれ17~18年もの間、デフレが続いている。だから日本はダメだ、一刻も早くデフレを克服しなければいけない、と主張する経済学者や知識人は多い。しかし、私は緩やかなデフレが続いている日本ほどいい国はないと思っている。デフレで名目賃金は下がっているが、(物価下落を考慮した)実質賃金はむしろ若干上がっている。

インフレの世の中というのは、おカネを借りられるような信用力の高い人が、おカネを借りれば借りるほどトクをする。インフレが続けば、借りたおカネの価値はそれだけ下がり、負担が小さくなっていくからだ。

デフレはその逆で、おカネを借りない方がいい。インフレのときは、自由におカネが借りられるのは政府や一流企業、金融機関のほか、個人でいえば一部の金持ちに限られ、多くの庶民は自由におカネを借りられるわけではない。つまり、インフレというのは、一部の人たちと多くの庶民とで優劣が分かれてしまう社会をもたらすのだ。

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