アベノミクスに騙されるな,デフレが日本救う 異色のエコノミスト・増田悦佐氏に聞く(上)

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ますだ えつすけ 1949年東京都生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修了後、ジョンズ・ホプキンス大学大学院で歴史学・経済学の博士課程修了。ニューヨーク州立大学助教授を経て、外資系証券会社で建設・住宅・不動産担当アナリストをつとめ、現在は株式会社ジパング経営戦略本部シニアアナリスト(撮影:吉野 純治)

たとえば、アメリカは政策的にインフレを目指してきた国だ。その結果、(貧富の格差を示す)ジニ係数は日本よりかなり高く、主要国ではブラジルに次いで、中国と並ぶ高水準にある。

一部の金持ちへの富の集中はすさまじく、最新のデータによれば、所得上位1%の取り分が2割近くと、主要国でダントツとなっている。

一方で、ファストフード業界やレストラン・バー業界などで働く低賃金の人たちは増えている。また、インフレによって、医療サービスの価格や大学の授業料は値上がりしている。日本は人為的にインフレを起こして、こういう一部の選ばれた人だけがトクをする社会にしたいのだろうか。

――インフレを目指すリフレ派の考え方では、異次元の金融緩和で為替を円安に誘導することも、物価上昇をもたらすために重要とされています。

円安でインフレを招くというのは、バカげた考えだ。円安で輸入物価は上昇するが、それでトクをするのは、便乗値上げをできる業者に限られる。昨年秋からの円安進行で、たしかに輸入物価は上がっている。でも、過半数の業者は価格転嫁(値上げ)ができていない。

円安の結果、輸出が増えるという見方もあるが、実際はそれほど増えていない。昨年11月以降、対ドルで円は約25%下落し、他通貨に対してもおおむね10~15%下落している。ところが、円換算の輸出額は、数%しか増えていない。現地通貨ベースの輸出額や輸出数量は減っている。

日本で生産される最終消費財は、円安で輸出が増えるような状況ではない。日本の電機メーカーがつくる最終消費財などは、技術的な優位性はほとんどなく、低廉な労働力を利用できる国でつくったほうが、競争力があるに決まっている。それを見誤った経営者が悪いのであり、いまさら円安で輸出を伸ばして生き延びようなんておかしい。

そもそも好景気のときは、インフレ、高金利になることが多かった。好景気でインフレや高金利になるのは、インフレも高金利も景気が過熱して急激に経済が悪化することを防ぐ自動制御装置だからだ。インフレにも、高金利にも景気をよくする機能はない。無理矢理インフレにして、景気をよくするという考え方はおかしい。順番が逆だ。

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