キヤノンと吉野家の決算を分析する 「円安」や「海外失速」で、想定外に業績が悪化

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吉野家以外にも、原材料の輸入の多い会社では円安の悪影響に苦しめられている企業が多いのではないかと思います。輸入価格の増減を示す「輸入物価指数」を見ますと、5月以降は2ケタペースで増えていますね。

それに伴って、企業間の物価を示す「国内企業物価指数」も4月以降、上昇し続けています。原材料に近い業種ほど、仕入れ価格が上がっているのです。(右の輸入物価指数、国内企業物価指数、消費者物価指数の表を参照)

ところが、最終消費財の物価を示す「消費者物価指数」は4月まで下がり続けて、ようやく6月に0.4%上昇したというところです。つまり、輸入価格や企業物価が上がっても、最終消費財の価格には十分に転嫁しきれていないということです。特に吉野家のように競争の激しいファストフード業界では、転嫁するどころか安売り競争をしています。なおかつ、予想外の円安に見舞われていますから、業績が悪化しやすいのです。

次の一手は、「低価格路線」と「高価格路線」の同時並行

そこで、各ファストフード店は戦略を変え始めています。たとえば、マクドナルドでは期間限定で1000円バーガーを発売しましたし、バーガーキングでも比較的高価格である650円のハンバーガー「ガーリック ミート モンスター」をメニューに加えました。このように、低価格路線を維持しながらも、少し価格の高い商品も投入するようになってきたのです。アベノミクスによって景気がよくなってきたと言われていますが、私たちの給料はまだあまり増えていません。

「現金給与総額」を見ますと、ようやく6月に0.6%増えましたが、それまでは前年比マイナスが続いている状況でした(右図表参考)。

こうした中で、株高が進みました。資産が増えたのは、株式や不動産を持つ一部の富裕層だけだったというわけです。以前もお話ししましたが、このところ百貨店などで高額品が売れているのは、「資産効果」が起こっているからなのです。

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