日本株下落の懸念要因は北朝鮮だけではない 核実験で4日以降の相場はどうなるのか
しかし、先導役だった家計部門について、依然として個人所得の増勢が続いているにもかかわらず、自動車販売と住宅関連のデータが変調を来たしている。米国内の自動車販売台数は、昨年12月をピークに減少傾向にある。住宅関連では、住宅着工件数は昨年10月でピークを打った形だ。最近発表の統計でも、7月分の住宅着工件数、住宅着工許可件数、新築住宅販売件数、中古住宅販売件数のすべてが6月分に比べて減少した。
住宅関連統計の悪化については、人手不足を挙げる声も聞こえる。つまり、景気が強過ぎて労働市場がひっ迫しており、住宅建設に必要な人が集まらない。そのため、住宅着工が増えないし、新築の住宅を売ろうにも、売るための家が建てられないというのだ。そうした面は否定しないし、百歩譲って、「だから住宅着工や新築住宅販売が伸びていない」のだとしよう。それでも、中古住宅販売が悪化気味で推移(2017年3月がピーク)していることの説明にはならない。
民間銀行の「融資基準厳格化」が背景に
筆者は、自動車と住宅の陰りの背景には、米国の民間銀行が、融資を慎重化させているところがあると考えている。一時自動車向けのサブプライムローンが増加していると言われていたが、足元では銀行などがサブプライムローンの抑制を進めていると報じられている。
米連銀の “Senior Loan Officer Opinion Survey on Bank Lending Practices” をみても、自動車ローンについては、2016年6月までは貸し出し審査の基準を緩めたという金融機関の方が多かったのに対し、それ以降は基準を厳しくしたという回答が多くなっている。集合住宅建設に向けての貸し出し審査も、昨年来、審査厳格化の傾向が強まっている。
このように金融機関が融資態度を慎重化することは、野放図に貸し出しを行なって、将来不良債権が増加するような展開に比べれば、健全なことだと言える。景気拡大の天井が低いが、息長く続くということも期待できる。こう考えれば、個人所得の増加基調もあり、「自動車や住宅市場が著しく悪化を見せて、景気全体の腰を折る」という状況に陥ることを今後のメインシナリオとする必要は薄い。
ただし、自動車や住宅市場の頭が抑えられたままで、他の景気悪化要因、たとえば長期金利の跳ね上がりや、前述の政策失望が、証券市場だけではなく企業や家計のマインドなども悪化させる事態となれば、景気の腰が脆い可能性は懸念される。
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