「生類憐れみの令」は「バカ将軍」が出したアホな法律か?
中原:私は経済を見るとき、経済学の知識はあまり重要視していません。その代わりに3つの視点を大事にしています。
1つ目は、物事の本質とは何かという視点。これは「大局を読む」ということでもありますが、その際に最も必要な学問は「哲学と歴史」だと思います。哲学は古代からある学問ですが、もともとは「真理とは何か」という問い掛けから出発しています。つまりは本質を問うているわけです。経済でも、本質を見ることが極めて重要なんです。
私がこういう着想を得たのは、若いころに読んだ井沢さんの著書がきっかけです。井沢さんが語っておられる歴史は、いわゆる歴史学者の知見とは一線を画しているように思います。言語学や天文学なども駆使しながら、その時代に何が起きたのか、当時の人々が何を考えていたのか、まさに本質を炙り出そうとされている。その姿勢に刺激をもらいつつ、強く共感しています。
井沢:ありがとうございます。でも、そんなに高尚な話でもないんです。僕はちょっとひねくれ者なだけですよ。
「裸の王様」という童話がありますね。王様は明らかに裸なのに、いろいろな常識やそれまでの学問などが邪魔をして、そのことが見えなくなることがある。それが学者や専門家の陥りやすい落とし穴だと思います。
たとえば江戸時代、5代将軍である徳川綱吉の「生類憐みの令」というと、多くの人はアホな法律と思っているかもしれません。歴史学者の中にも、そう思っている人はいます。実は当時の人も、まったく評価していませんでした。綱吉を「バカ将軍」と見なしていたんです。
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