革命や動乱の源には、インフレがある
中原:歴史的に見ると、革命や動乱というのは、デフレのときにはまったく起きていません。すべてインフレのときに起こっているんです。18世紀のフランス革命もそう、20世紀の天安門事件もそう、21世紀の「アラブの春」もそうです。
つまるところ、物価が勢いよく上がり続けると、庶民が生活苦に陥ってしまうというわけです。逆にいえば、よほどのインフレが起きないかぎり、革命や動乱なんて起きないんです。
井沢:庶民というのは、基本的に相当イヤなことがあっても、たいてい我慢します。下手に政府に逆らったら、殺されるかもしれないから。その人たちが最後の最後で立ち上がるのは、やっぱり飢えなんです。歴史教科書もテレビや新聞も、そこらへんのことをちゃんと伝えていないですよね。
中原:そうですね。たとえば「アラブの春」のきっかけは、小麦価格の高騰でした。2000年以降、原油をはじめあらゆる資源の価格が高騰を続け、その影響を受けて、小麦など穀物の価格までも大幅に上がってしまった。小麦の価格が高騰することで主食のパンの価格も高騰し、庶民は食べていくのが大変になったんです。
そこで、チュニジアのある若者が生活に困って露店を開いていたら、警察に嫌がらせを受けて退去させられた。若者は「もう食っていけない」と抗議の焼身自殺をする。それがSNSで一気に拡散し、独裁政権を倒せという運動につながり、さらにエジプトなど周辺国にも波及していったわけです。民主化を歓迎した欧米メディアが「アラブの春」と名付けたものの、その後の治安の悪化や紛争によって多くの人々が亡くなっていることを考えると、「春」という言葉はふさわしくない。「アラブの冬」と言ったほうが正しいのではないでしょうか。
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