中原:経済学者も、もっと市井の人になり切って経済を見る必要がありますね。
だいたい経済学というのは、原因と結果を簡単に転倒できるんです。物理や自然科学の世界では絶対にありえないことが、経済学ではありうる。むしろ積極的に転倒させて理屈をこねるのが経済学。おかしな学問になっているわけです。
「自然科学でありえないことが、経済学では起こる」。実はこれが、私が経済を見るうえで大事にしている3つ目の視点です。経済学の根本的な誤りに気をつけ、むしろ自然科学の法則に照らしてみるということです。
井沢:それもすごく重要なことです。僕は大学を卒業してTBSに就職し、ドラマの制作でもやろうかなと思っていたら報道に配属された。まったく予期しない仕事をやらされたわけですが、今から振り返ると非常によかったと思います。
報道の基本は、うわさを信じないことです。たとえ専門家の言っていることでも、鵜呑みにしてはいけない。必ず自分の目で確かめ、真実かどうか裏を取る必要がある。それをみっちり教えられたのです。たとえば、世間が「この人はものすごく悪い奴だ」と評している場合でも、実際に調べてみると、そうではないことがよくあります。
歴史を検証すれば「デフレは原因でなく結果」だとわかる
中原:その典型が「デフレ」のとらえ方ですね。本来、デフレやインフレというのは「原因」ではなく、あくまでも「結果」なんです。好況の結果、インフレになる場合もあるし、デフレになる場合もある。不況の結果、デフレになるときもインフレになるときもある。歴史をさかのぼってきちんと検証すれば、これは明らかです。私がそういう説明をすると、自然科学の分野にいる人ならすぐに理解してくれます。しかし経済学をガチガチに勉強してきた人ほど、それはおかしな話だと言い出すんです(笑)。
それが今、日本の経済政策にもおかしな影響を及ぼしています。「デフレ克服」が合言葉のようになっていますが、だから実質賃金が大幅に下がり、誰もおカネを使わなくなっている。こんな間違った常識が経済学の主流になっているからダメなんです。ある意味、遅れた学界ですよね。
(後編に続く。後編は9月11日に配信の予定です)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら