東芝のメモリ売却交渉、またもや結論先送り WDとの溝埋まらず、経営陣の本気度に疑問も

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常識的に考えれば、5000億円超の債務超過は、メモリ売却なしには解消が困難なため、上場廃止は免れない。しかし、東芝に関しては、結論(今回は上場維持)ありきで、他社ならばまず認められない手法もまかり通る現実を見せられてきた。

メモリ売却が間に合わない場合に、上場廃止を回避するにはどういう策があるのか、という視点でアプローチすべきなのだろう。債務超過のままでの上場維持といった特例はさすがに東証も認めにくい。債務超過は解消する必要がある。そのためには当たり前だが、利益を積み上げるか、資本を増強するしかない。

資産売却と資本増強の組み合わせも選択肢

2018年3月期の会社予想の最終利益は2300億円(メモリ事業を売却しない前提)である。人材流出や信用不安で足元の受注は厳しいが、NAND市況や為替などの前提、これまでの減損や賃金カットを考えれば、今期の業績はここから上振れる可能性が高い。

急速な円高の進行や新たな訴訟などによる特別損失の発生がなければ、2018年3月末の債務超過額は3000億円を切ってくる。その程度の金額ならば、残る上場子会社株などの資産売却とDES(デット・エクイティ・スワップ=債務の株式化)や優先株発行、第三者割当増資など資本増強策を組み合わせれば処理できるのではないか。

現状、具体的な資本増強策が検討されている様子はないが、それしか手がなければ選択肢に挙がらないわけはない。

メモリ売却を間に合わせるスキームに切り替わる可能性もゼロではない。事業会社を入れず金融資本のみに売却するならば、独禁法審査が間に合うかもしれない。

東芝の半導体メモリ事業の売却を巡って、事態は混迷を深める一方だ(写真はイメージ、車載用半導体でメモリではない)(撮影:尾形文繁)

東芝メモリを2兆円で売却できれば、株主資本を7000億円積み上げられるというのが現在の試算だが、これは売却益に課税される前提。米国ウエスチングハウス関連の損失が税務上の欠損金として認められれば、株式を半分程度売れば間に合う――。

「結局、東芝の経営陣は何とかなると考えているのだろう」。メモリ売却をめぐって振り回されている関係者は、疲れ切った口調でこう吐き捨てた。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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