「東京ガールズコレクション」驚異の事業構造 「国連」も巻き込む圧倒的ビジネスモデルとは

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一方で、イベントは完全招待制で開催され、現地のメディア、ファッション業界や財界のVIP、インフルエンサーなどとの交流の場として提供することで、日本企業と現地企業のマッチングを色濃く演出した。

ケース3:国連本部でファッションショーを開催

TGCが第20回を迎えた2015年2月、国連が推進する女性のエンパワーメントと女性が輝く社会に向けて、男女が共に歩むことを目指した「One Woman Campaign」の目的と意義に共感し、国連の友(本部:米国ニューヨーク)のアジア太平洋地域(51カ国)を統括する国連の友Asia-Pacificとの提携を発表。

TGCの中で、国連が提唱する「持続可能な開発目標(SDGs)」の啓発活動と、TGCの圧倒的認知度と拡散力が高く評価され、2018年5月に国連本部(アメリカ・ニューヨーク)にてTGCのファッションセレモニーを開催することが決まっている。

ショービジネスを超えた次代の価値連鎖

いまやTGCは単なるファッションショーというモデルを超え、最先端のファッションとテクノロジー、アート、カルチャーを発信・拡散していくプラットフォームとして進化している。

その熱気と発信力に引き付けられるのは、若い女性だけではなく、大手企業や地方自治体も、さらに来年2018年5月にTGCのショーの実施が決まっているニューヨークでの国連本部なども同様である。

TGCが体現しているアクセラレートチェーンは、企業同士だけの連携形態ではなく、顧客(観客/コンシューマ)をも巻き込んだバリューチェーンであり、ショーというビジネスモデルが持つ主体と客体の関係性に関して、その位置づけを変えてしまったのである。

特に、参加者全員がインフルエンサーとして加速化の中心となっている点で、出色である。TGCの運営主体であるW TOKYOは、インフルエンサー(コンシューマ・クライアント・事業者・自治体)に対して、TGCというプラットフォームを提供し、それぞれがマーケットから求められる良質なコンテンツをプロデュースし発信・拡散できる機会にしてもらおうとしている。

今後も、AI、IoT、ロボティクス、ドローンなどの21世紀の最先端テクノロジーを駆使して、このアクセラレートチェーンが産み出す、その効果、プロフィット、インパクトを加速化させることをビジネスの価値と置く企業として、さらなるチャレンジを続けるであろう。

小林 一郎 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授、学術博士

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こばやし いちろう / Ichiro Kobayashi

1960年、岡山県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。味の素、プライスウォーターハウスを経て、M&A(企業買収)コンサルタントとして独立後、大手企業の顧問やベンチャー企業のインキュベーションにかかわる。ビジネスの現場で活躍する一方で、青山学院大学特任教授、タイ王国国立チュラロンコン大学大学院客員教授、欧州復興開発銀行(EBRD)シニアインダストリアルアドバイザーなどを歴任。専門は、コーポレートファイナンス、M&A、イノベーション、社会経済分野。主な著作に、『英語のできない人は仕事ができる』(PHP研究所)、『脱・社内奴隷』(共著、ユナイテッド・ブックス/阪急コミュニケーションズ)、『海外M&Aで役立つ グローバル戦略の勘どころ』(中央経済社)など多数。

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