「2%物価目標は間違い、日銀は出口戦略示せ」 木内登英・前日本銀行審議委員に聞く

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YCCは金利を通じた市場安定化というメカニズムを損なうもので、経済を不安定化させる。仮に米国経済が強くなりすぎるなどの理由で期待インフレ率が上昇する中で、低い名目金利を維持するオペレーションを行うと実質金利はもっと下がるため、さらに景気を強くする効果が出てしまう。そうするとより長期金利が上昇するので、さらに買い入れを増やして…とエンドレスに拡張効果が出てしまう。

逆もまたしかりで、長期の期待インフレ率が下がって、名目長期金利が下がったときに、下がりすぎないように誘導すると実質金利が上がるので、金融引き締めの効果が出てしまい、さらに名目長期金利が低下してしまうと、悪循環に陥る。

こうしたショックが出てくれば正常化のきっかけになるが、市場に混乱が起きる前に正常化すべきだ。機会があるとすれば、人事が変わる(黒田総裁の任期が終わる)2018年春が一つメドになるだろう。

正常化しないとリスクはもっと積み上がる

──信用サイクルは10年といわれる。先進国の金融緩和が長期化したために、世界中ですでにリーマンショックの前を上回る債務が積み上がってきている。再び金融危機が来るおそれはないか。

可能性は十分ある。米国の家計の債務はリーマンショックの時のような住宅ではなく、自動車ローンやクレジットカードが主で、規模は大きくない。ただ、新興国では相当な規模が積み上がっているので、火種といえる。

欧州の不良債権問題が解決していないことも気がかりだ。金融機関が本当に健全になったかどうかも疑わしい。資本は積ませたけれども、規制強化で収益性が非常に下がっていて、金融仲介機能も削がれているので、経済が悪化したら信用危機になるリスクはあるのではないか。

スプレッド(利ザヤ)が縮んでいるので、個人も含めて幅広い投資家が幅広いリスク取っている。それが調整を迎える。リスクのスプレッドだけでなく基本となる国債の利回りも下がりすぎているので、二重の意味で歪みがある。国債の利回りが戻って、スプレッドも開くとなると、ハイイールド債などでより大きな調整が起こるリスクがある。金融政策の正常化をしないままでは、リスクがもっと積み上がることになるだろう。

大崎 明子 東洋経済 編集委員

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おおさき あきこ / Akiko Osaki

早稲田大学政治経済学部卒。1985年東洋経済新報社入社。機械、精密機器業界などを担当後、関西支社でバブルのピークと崩壊に遇い不動産市場を取材。その後、『週刊東洋経済』編集部、『オール投資』編集部、証券・保険・銀行業界の担当を経て『金融ビジネス』編集長。一橋大学大学院国際企業戦略研究科(経営法務)修士。現在は、金融市場全般と地方銀行をウォッチする一方、マクロ経済を担当。

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