地方の産業は「中抜き」すれば生き返るか? チーム制で作る、新しい「6次産業」

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ぼくとつとした女川弁で語るレイダースの鈴木さんは、実はすごくロマンチストで、文章やデザインのセンスがよい。サイト内のおしゃれなブランドのネーミングもロゴも、鈴木さんによるものだ。

おしゃれで丈夫なバッグは1万3800円と相応の価格なのだが、増産してもすぐ売り切れてしまい、最近は予約商品となっていることも多い。

大勢の人がかかわり作られたモノが値下げをせず、コンスタントに売れていく。それによって、かかわったみんなにきちんとおカネが入っていく。そうした仕組みはすごく気持ちいいし、これからもたくさん展開していきたい。

ヒユカはトートバッグの成功を機に、次なる商品開発、試作品作りを進めていった。女川の桜の木のぬくもりを生かしたペン立てや、栃木名物のレザーを使ったカードケースなども人気商品だ。

「東北でよりよい商品を作って売っていくには、被災地だけにこだわらず、ほかの地域のパワーを得ることも大切だ」

ヒユカを見ていて、僕はそう感じた。被災地には比較的のんびり作業する、そのうえ作業料金も安くない、といった課題をもった会社もある。だからすべて被災地で作ろうとせず、外からの刺激を得て改善していく必要も感じていた。

生産者の方々の並々ならぬ苦労を知って、そのうえで「価値」を作っていきたい

石巻に来てから、僕は生産者さんや職人さんの並々ならぬ苦労や努力を知り、モノは粗末にできないなとあらためて感じるようになった。こうした苦労をもっと世間に知らせなければいけないと思う。食べ物やモノの大切さを、もっと子供たちにもきちんと教えるべきなんじゃないかと。

いろいろ書いてきたわけですが、6次産業とか国内生産・国内消費とか、こうしたテーマについては震災があったからといって、世の中がいきなり動くわけではない。そもそも、僕みたいに今までぽわーんとしていた人間がワーワー言ったところで、「今さら何言ってんのよ」と思う人もたくさんいるでしょう。

それでも、重要なのは「どう価値を作っていくか」だと思う。商売をしていく以上、生産者の思いを伝えるというのも、6次産業化するというのもあくまでも手段にすぎない。それを頭におきながら、いかに東北のみなさんと楽しく価値を作っていけるかを考え、実行し続けられたらと思っている。

(構成:渡部由美子)

長谷川 琢也 ヤフー株式会社復興支援室

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はせがわ たくや / Hasegawa Takuya

ヤフー株式会社復興支援室。
ヤフー株式会社ECオペレーション本部部長を経て現職に。

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