善意の倍返し
あっ、すいません。もうひとつ大事なことを忘れていました。それは「見返りを求めない」ことです。
半沢直樹は奇特な人だと思います。対極的なキャラクターが同居しているからです。少し怖い目をして「やられたら、やりかえす」とすごむ一方で、妻や同僚には優しい眼差しを向けます。
育った環境のせいでしょうか。工場を営んでいた最愛の父が銀行の裏切りによって自殺。残された彼は人々の善意の中で育ちます。だから、悪意に敢然と立ち向かう一方で、社会的な弱者に対しては寛容なのだと思います。壇蜜演じる敵役の愛人=藤沢未樹(前半「大阪編」に登場)に対するアプローチがその一例。
当初、彼は壇蜜を「人からだまし取ったカネで、商売を始めようとする私利私欲の輩」と見なして手厳しい対応をします。オレに情報を渡すなら、開業資金を貸してやろうじゃないか、と上から目線の取引を持ちかけるのです。
しかし、彼女がちょっとしたファイナンスの制度を知らないがために、イヤな男の情婦に身をやつしていることを知ると、半沢直樹は真逆に走ります。何の見返りも要求せず、融資の世話をするのです。優しい目配せをしながら。
結果は周知のとおり。壇蜜は半沢直樹に情報を渡し、運命の歯車は逆回転し、ドラマは怒濤のクライマックスに突き進んでいくのです。
半沢直樹自身が困っているときに人から助けられたから、困っている人を助けるのでしょう。まさに、「やられたら、やりかえす」しかし、「善意の倍返し」です。見返りを求めず善意で人に接することが、結果的に人から善意が返ってくることにつながるのだ、と考えるのは私だけでしょうか。もし女性に引かれた経験があったら、この記事のことを思い出していただければ幸いです。
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