日本人よ、「観光先進国・タイ」から謙虚に学べ 「物価が安い」のに大金を使わせる工夫とは
この連載で繰り返し述べてきたように、欧州からの観光客の最大の特徴は、アジアに観光すると、他の地域からやってくる観光客よりも多くのおカネを落とすことです。それはタイも同様で、国別の観光収入では、やはり欧州からの観光客が最も多くのおカネを落としています。
タイと日本が世界の各地域からどれだけの国際観光収入を稼いでいるのかを比較してみましょう。欧州からの観光客が日本に落としているおカネは、タイの実績の20.4%にとどまっています。一方、「欧州」という要素を除いてタイと日本の国際観光収入で比較すると、実はそれほど大きな差はありません。
つまり、タイが国際観光収入という「質」の部分で世界第3位というポジションを手にしているのは、おカネを落とす欧州からの観光客を多く呼ぶことに成功しているからなのです。
では、このタイの観光モデルから、日本は何を学ぶべきでしょうか。
日本がタイから謙虚に学ぶべきこと
日本の2016年の国際観光客数は、2015年のタイの観光客数の80.3%となっています。
外国人観光客の平均滞在日数を見ると、タイの9.5日に対して日本は10.1日となっています。これだけを見ると、日本の物価はタイのおよそ2倍なのですから、 観光客1人当たりの支出総額で、日本はタイを大きく上回っていそうです。
しかし現実は、タイの96.9%にとどまっています。観光客が1日当たりに使う金額も、日本はタイの90.8%です。
なぜ外国人観光客は、物価が高い日本より、物価の低いタイにより多くのおカネを落としているのでしょうか。
その「象徴的な答えのひとつ」が、「外国人が心底失望する『日本のホテル事情』」でも指摘させていただいた5つ星の高級ホテルです。日本にはわずか28軒しかない5つ星の高級ホテルが、タイには110軒あります。
タイを訪れる観光客が落とすおカネの49%は食事やホテルに費やされます。つまり、タイはこのあたりでしっかりとおカネを稼いでいるのです。
ちなみに、先の記事でも誤解している方が多くいましたが、ここでいう5つ星ホテルとは、建物や設備が超豪華だったり、ブランド力があるというだけではありません。宿泊者が滞在中、ホテル内ではもちろん、ホテル外のアクティビティまで含めて一切不便を感じないような、極めてきめ細かいサービスを提供しているホテルのことです。
タイというと、物価が安くてバックパッカーのようにおカネを落とさない外国人観光客が多く訪れているという印象を抱く人も多いでしょう。もちろん、そのような人たちもタイには多く訪れていますが、その一方で110軒の高級ホテルに宿泊して、個々の要望に沿ったサービスに満足して大金を落とすような「上客」も多く訪れているのです。
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