日本人よ、「観光先進国・タイ」から謙虚に学べ 「物価が安い」のに大金を使わせる工夫とは

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先週の記事(欧州「怒りの反観光デモ」は京都でも起きるか)で、「マス向け格安旅行」だけではなく、上客まで含めてバランスよく誘致するべきだと申し上げましたが、タイはその成功モデルといえます。

「多様性」のポテンシャルでは日本はタイより強い

これまで著書や講演で、観光戦略においては重要なのは「多様性」だということを繰り返し指摘させていただきましたが、タイはまさしく「多様性」という武器で、「アジア観光」の成長を牽引する国となっているのです。

しかし、「自然、気候、文化、食事」など観光資源の多様性ということでいえば、本来はこのポジションは日本が担うべきだと私は考えています。

そのために日本がすべきことは「偏り」を解消することです。

世界の国別アウトバウンド使用金額ランキングを見ると、世界一観光におカネを使っているのは中国です。第2位のアメリカ、第7位の韓国についても、日本の実績は順調です。

出所:UNWTO Tourism Highlights, 2017 Edition

実際、韓国人がアウトバウンドで使っている支出の11.9%が日本で使われています。中国人も、アウトバウンド使用金額の5%を日本に使っています。

しかし、第3位のドイツ、第4位のイギリス、第5位のフランス、第6位のカナダは、まだほとんど未開拓です。ドイツはいちばん少なく、0.3%にすぎません。

これからは、これらの未開拓マーケットに挑戦するタイミングです。その際、このマーケットにおいて大成功を収めているタイを参考にすべきなのは、言うまでもないでしょう。

「UNWTO Tourism Highlights, 2017 Edition」でも、これから世界は「アジア観光」の時代だと予測されています。そのような「成功が約束された市場」のなかで、日本はタイや中国と並ぶ「観光大国」になれるのか。

最も重要なポイントは、訪日観光客の国籍の「多様性」という視点なのです。

デービッド・アトキンソン 小西美術工藝社社長

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David Atkinson

元ゴールドマン・サックスアナリスト。裏千家茶名「宗真」拝受。1965年イギリス生まれ。オックスフォード大学「日本学」専攻。1992年にゴールドマン・サックス入社。日本の不良債権の実態を暴くリポートを発表し注目を浴びる。1998年に同社managing director(取締役)、2006年にpartner(共同出資者)となるが、マネーゲームを達観するに至り、2007年に退社。1999年に裏千家入門、2006年茶名「宗真」を拝受。2009年、創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手がける小西美術工藝社入社、取締役就任。2010年代表取締役会長、2011年同会長兼社長に就任し、日本の伝統文化を守りつつ伝統文化財をめぐる行政や業界の改革への提言を続けている。

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