運動で健康になると信じる人の大いなる誤解 特定の競技だけでは身体に偏りが出てしまう
先進医療が進むアメリカでも最新のリサーチが現場に定着するまでには17年かかる。拙著『世界の最新医学が証明した 究極の疲れないカラダ』でもいくつかに紹介しているが、日本にはその後に入ってくることを考えれば、われわれ日本人が当たり前に思っている健康常識も世界から見れば間違っていることもある。
腰や背中を痛めたときに医者から「筋力をつけなさい」と指導されることは多い。何もしていないのに「突然、首や腰が痛くなった」「疲れやすくなった」という人は、年齢が原因だと考える。たしかに、年齢とともに筋肉量や筋肉につながる神経量は落ちる。すると、筋肉の中にあるグリコーゲンの量が少なくなってパワーが出なくなる。血液循環も悪くなり、細胞の回復も遅くなる。いわゆる老化現象だ。
しかし、加齢によって不調が起こるわけではない。元々悪くなっていた部分の自己治癒が追いつかず、疲れやすさや痛みとなって表れるのだ。
そもそも人間は、まっすぐに立つだけでもポステリアチェーンというカラダの後ろ側の筋肉をフルに使用している。「何もしていないのにすぐ疲れる」のは当然で、日常生活の動作で軟部組織(筋肉・靭帯)のマイナーテア、すなわち細かい筋線維の故障、破れを頻繁に起こしているのだ。目に見える損傷はなくても、組織レベルでは硬く動きにくくなっている。普段どおりの生活を送っていても、私たちは思っている以上にカラダを酷使している。そこで回復スピードが追いつかず、壊れるとケガになる。
疲労回復のためにマッサージへ行ったり、休んだりすることで「疲れがとれた」というのは、ラクになっただけで、疲れないカラダになったわけではない。入浴すれば血行が促進されるので、すっきりした気分になる。疲れもなくなったように思えるものの、来週また元気に働けるカラダになったわけではないのと同じだ。
大切なのは、カラダのキャパシティ(機能運動性)を増やすことで、これはアメリカのプロスポーツ現場では当たり前に取り入れられている。
いきなりジムに飛び込んではいけない
ジムのマシンは筋肉を部分的にトレーニングするコンセプトでつくられていて、比較的簡単に使えるものの、健康体になるために全身の機能運動性をトレーニングするのには極めて不向きな方法だ。
人間の能力は狙ったとおりにしか向上しない。たとえばバランスボールの上に乗ってバランス感覚を鍛えたものが、日常生活で役立つかといえば、何もしない人よりはまし程度のものでしかない。大玉の上でジャグリングするサーカス団員には有効なトレーニングかもしれない。ただ、不安定な場所でバランスが求められる場面は日常ではほとんどない。地面に立って、バーベルを担いだほうが筋力を高めるにはよほど効果的だ。
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