松山英樹世代の新しい伝説が始まる タイガー・ウッズに続け!

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「彼はたくさんの可能性を持っている。ショットもいいね。彼が若いということがわかるのは、積極的にピンに向かっていって、外れることなんて考えてもいない。キャディーのジョーと話していたんだ。みんな歳を取るといろいろ考える・・・とにかくいろいろ。でも彼はそんな複雑なことは気にしていない。最高だね。彼が何かをつかむのは時間の問題だね」

これはタイガー・ウッズの、松山英樹に対してのコメントである。思えば、タイガーがマスターズ初優勝など、時代を塗り替えたのは20代前半。その若者も今では37歳(12月30日で38歳)になった。タイガーは、8月中旬のブリヂストン招待に優勝して生涯79勝を果たし、サム・スニードの持つ記録にあと3勝と迫った。そのタイガーが、今季もメジャーに勝てないでいる。

面白いデータがある。37歳という年齢で区切ってみると、プロ転向後メジャー大会63試合に出場して優勝が14回。そしてジャック・ニクラウスの37歳(1977年)と比較すると、プロ転向後メジャー大会63試合に出場して、やはり14勝とまったく同じ記録なのである。メジャー大会に勝つというのが、どれほど大変かということと、やはり年齢を重ねて勝ち続けることの精進、努力がどれだけすさまじいことかということがわかる。ちなみにニクラウスがメジャー15勝目を果たしたのは、翌78年の全米オープンだった。

松山は、幸運にもそんなタイガー・ウッズと一緒の組で2日間プレーした。その2日目にタイガーは、61というスコアでホールアウトした。そのゴルフを目の当たりにした松山は「次元が違う」と言ったという。

僕は、松山英樹という選手ならば、日本人選手として、やがて世界のメジャータイトルを獲ってくれると思っている。彼が、今21歳という若さでタイガーをはじめ世界一流選手、それもウィナーズサークル(つねに優勝争いをする常連選手たち)の選手と一緒に戦う経験をしていることが、とても大きな刺激材料になると思う。

松山に対する期待感が大きいのは、「次元が違う」と言って自分の枠を閉じてしまうのではなく、ならば自分はどうすればいいのか、という貪欲さと、人一倍速い吸収力を持ち合わせているからだ。事実、今季の全米オープンのときに「パッティングの調子が悪い」と言いながら、すぐに修正できたし、全英オープンのときは「歯が立たない。どこを狙ったらいいのか見当がつかない」と言っていた練習日の翌日には、しっかりと学習能力を発揮して、自分の攻略ルートを見つけ出した。

僕たちはタイガー伝説を目撃し、今度は、松山英樹世代の伝説を目撃できるかもしれない時代にいる。ちょうどこのコラムが500回目となる節目に、新たな伝説が始まろうとしている、と思いたい。

三田村 昌鳳 ゴルフジャーナリスト

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みたむら しょうほう

1949年生まれ。大学卒業後、『週刊アサヒゴルフ』副編集長を経て、77年にスポーツ編集プロダクション(株)S&Aプランニングを設立。日本ゴルフ協会(JGA)オフィシャルライター、日本プロゴルフ協会(JPGA)理事。逗子・法勝寺の住職も務める。

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