プロゴルファーなら誰もが勝ちたいと思います。それがメジャーとなればなおさらです。ゴルフ発祥の地で歴史ある全英オープンともなればさらに夢は膨らみます。今年はミュアフィールド・リンクスで開催されました。オールド・トム・モリスの設計で120年前に造られたそうです。
私は6年前、ゴルフ場設計の勉強のためにスコットランドのリンクスゴルフ場をあちこち訪ね歩いたときにそのゴルフ場に行きました。その日は全英シニアオープンの練習日で、青木功プロや倉本昌弘プロ、室田淳プロらが練習をされていました。コースを見た印象はフラットで狭く、風が吹いたらボールはどこまでも曲がり、長いヒースに入ったらひと苦労だと思いました。今回新人の松山英樹プロが6位というすばらしい成績を挙げ、いつか世界のメジャーを手に入れる日が来るのではと期待が膨らみました。
話によれば、ミュアフィールドは史上最強のプロゴルファー、ジャック・ニクラウスが最も好きなゴルフ場らしく、そういえば米国オハイオ州に自分で設計したゴルフ場の名前も確かミュアフィールド・ビレッジ・ゴルフクラブ。ニクラウスの設計したゴルフ場は難度が高く、特にショットのテクニックがないと良いスコアを出しにくい印象です。
また、ニクラウスの本を読んだときに驚いたのは、プロになったときからすでにゴルフ場設計の勉強をしていたらしいのです。ということは、ゴルフ場造りのノウハウと歴史を知っているので、設計者の意図が見え、ポイントを突いた攻め方ができると思うのです。
また、グリーン上のボールのラインを読むのでも、グリーンそのものの構造を知っていれば、形状と併せて排水方向や芝の生え方、強さ、芽の向き等、その表面上から判断する以上に正確に把握できるはずです。コースのデザインにしてもバンカーはなぜこの配置なのか、この形なのか。パー3や4や5の配置にしてもどういう理由での配置なのか、コースを攻めるときに役立つと推測します。プロになって経験を積みながら理解を深めるのではなく、事前に学んで実践でプレーしてきたからこそのすばらしい実績に納得を通り越して感動しました。そして歴代1位メジャー18勝はまだ破られていないのです。
あるとき、テレビでレオナルド・ダ・ビンチのことを放送していました。1400年代に描いた「音楽家の肖像」という男性の顔の絵ですが、ほお骨やあごの陰影が正しく描かれているそうです。それは彼が解剖学に精通していて、顔の構造を熟知していたからだそうです。これを見てニクラウスを思い出しました。単に表面上から物を見るのではなく、内側にあるそのものの構造を理解した上で、形として表す。だから人を感動させられる物を作ったり、パフォーマンスができるのでしょう。歴史に名を残すほど傑出した人は、物事に対峙する態度が抜けていると感服しました。
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