都内から続々移住、築50年郊外団地のヒミツ 衰退する郊外は37㎡・1LDK物件から蘇る?

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大島:なぜ郊外ばかり手掛けているのかというと、都心より郊外のほうが、人間らしい暮らしをデザインできる余地があるから、仕事をやっていて楽しいんですね。都心だと、いまだに新築というだけで工夫しなくても物件が流通してしまう傾向がありますから。

もっとも、やはりそこの地主さんなどが、ある程度長期的な目線で「自分たちの街をどうにかしなきゃいけない。今動かないと選ばれない街になってしまう」と危機意識を持ち始めていて、今重い腰を上げて何かアクションを起こそうとしているという状況に駆り立てられる部分もあります。

さらに、郊外を沿線に抱える鉄道会社や、郊外の団地を開発してきたUR(都市再生機構)さんたちも問題意識を共有している。ここ1年半くらいは、彼らと足並みをそろえて、共に集って語り合い、どうプロジェクトに落とし込んでいくかを考えています。

郊外再生といっても、建物というハードウエアの再生というよりは、街全体の再生を考えていかなきゃいけない時代が来ているんです。

標語は「脱ベッドタウン」

三浦 郊外の再生ということを考えたとき、核となるコンセプトはなんでしょう。

大島:とにかく「脱ベッドタウン」を標語として掲げています。これまでの郊外の機能であった、通勤する人が寝に帰る場所という機能を見直すべきだと。おこがましいかもしれませんが、三浦さんが郊外再生の道として脱ベッドタウンとおっしゃったのとまさに同じタイミングで(笑)。

そのためには、生活圏内で仕事ができるようにしなきゃいけない。若い世代にとって、1日24時間のうちでは仕事に費やす時間が圧倒的に長いわけです。それを自分たちの街の中でできるようになれば、周辺にさらに新たなビジネス(商い)が生まれる可能性も生じる。まずはその環境を整えることが大事だと思います。

三浦:ベッドタウンとしての郊外が成り立たなくなったのは、やっぱり女性が働くことが前提になってきたのが大きいですね。

「女性が働くことが前提になってことで、都心周辺の住宅地にベッドタウン的機能が移った」と三浦氏(撮影:梅谷秀司)

家事や子育てしながら働くとなると、郊外から出勤するのはつらいので、東京都心の近くに居を構え、武蔵小杉のタワマンが人気になる。私が行った住みたい街調査によれば、武蔵小杉は正社員人気ナンバーワンなんです(武蔵小杉が「住みたい街」と答える人の共通点)。ここをベッドタウンとは呼ばないけれど、縦に伸びただけで、機能としては一緒です。豊洲も月島もそうですね。

大島:そうですね。女性が働くということを考えた際に、僕は多摩ニュータウン近辺の、都心まで1時間を切るエリアでとても面白いことができそうだと思う。あのあたりの開発が始まったのは1960年代以降なので、高齢化が進んでいるところも多い。でも、いまだに宅地開発、マンション開発が少しずつ進んでいて、核家族世帯が流入する傾向も維持している。

ここを買う人の世帯年収って、千葉や茨城方面と比べると格段に高いんです。住んでいるお母さんたちも、共働きでハイキャリアの人が多い。そこから約1時間という都心までの距離は、毎朝通勤するのはツラいが、自分のペースで仕事ができる人にとっては理想的な環境とも言えます。可能性を秘めながらくすぶっている人たちにとって、同じ感覚を共有する仲間と共に、起業できる環境のニーズは潜在的に多いはず。

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