横須賀から面白いコンテンツが生まれるワケ カレーチョコやイングレスで観光集客
ゲーム好きの古崎さんが、2014年7月のiOS版のリリースを受けてゲームを始め、周りを誘ううちに、観光企画課内に、「面白い」と広まっていった。
次第に、千葉や静岡から横須賀にリンクが張られ、横須賀に来るユーザーが増えるのを感じ始め、これは観光集客に使えると動き出し、イングレスを利用した市の集客事業を公式に開始したのが、2014年の12月18日のことだ。
行政主導によるイングレスを利用した観光集客に取り組んだのは、岩手県が最初で、横須賀は2番目だった。その後、ほかのいくつかの自治体や観光協会などが、同様の集客事業を開始したが、岩手や横須賀ほどには話題になっていない。
この点について古崎さんは、「横須賀は、ほかに先駆けて手掛けることができたのが大きいのでは。すべてタイミングの問題で、特別なことはしていない」と話す。
確かに、イベントやPRを仕掛けていくのがとても早かった。公式に事業がスタートした1週間後の2014年12月25日には、横須賀の沖合に浮かぶ無人島「猿島」に、ゲームに特化したパワーブロガーたちを呼び、記事を書いてもらうイベントを実施した。この効果が大きく、イングレス=横須賀というイメージが定着していった。
どれくらい集客に結び付いているのか
では、実際にどれくらいのお客さんが、イングレスがきっかけで、横須賀を訪れているのだろうか。
参考になるのが、ミッションイベントの参加者の数だ。「ミッション」とは、イングレス内にユーザーが作成できるスタンプラリーのようなゲーム内機能のことで、ミッションイベントでは、ミッションをクリアした参加者に賞品等を授与する。最近では、横須賀が舞台になっているアニメ『ハイスクール・フリート』とのコラボミッションなども実施した。
市では、2015年2月から現在まで、8回のミッションイベントを行い、延べ3000人以上が参加している。これを見れば、イベントに参加せず、ゲームのみ楽しむために横須賀を訪れる人も、相当数あると想像がつく。
また、数字には表れない効果だが、「イングレスで横須賀を訪れてくださる常連やリピーターが増え、中心市街地や観光名所だけでなく、市内全域を回ってくださるお客さんが増えた感触がある」(古崎さん)という。これは、ポータルが、市内全域にある程度、分散している結果だろう。
ゲームの効果は、これだけにとどまらない。実は、イングレスとポケモンGOは、同じナイアンティックが運営元であるために、ポケモンGOの“ポケストップ”は、イングレスのポータルを基本につくられており、3000カ所以上のイングレスポータルが存在する横須賀市はポケモンGOのユーザーにとっても、遊びやすい場所なのだ。
したがって、今後も同社が、新しい位置情報ゲームをリリースすれば、自然と横須賀にユーザーが集まる可能性が高い。
古崎さんは、「サブカルに関して何かコラボできることがあれば、声をかけてもらえるよう、横須賀はサブカルに力を入れているという姿勢をとり続けたい。サブカルは一過性のものだから、やっても無駄という自治体が多いが、継続していく姿勢を見せることで、よい連鎖を生む」と話す。
横須賀市のイングレスの特設サイトでは、通常の観光ルートではなく、イングレスのポータルを効率的に攻略するモデルコースを公開しているが、こうしたものは、職員がゲームの本気ユーザーであるからこそ、できるものだ。
「お客さんはイベントを仕掛ける側が本気かどうかをしっかり見ている。とりあえずやっておけばいいというようなイベントを打てば、必ず見透かされる」と話す古崎さんの目は、本気そのものだ。
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