ルネサス、鶴岡工場閉鎖は本当に妥当なのか “消えかけた"独立案が再浮上
売却が実現しない以上、鶴岡閉鎖はやむを得ない――。それが今回の判断だが、鶴岡閉鎖が本当にルネサスにとってプラスなのかは疑問が残る。
これまで「週刊東洋経済」でもたびたび報じてきたように、鶴岡工場には独立計画があった。産業革新機構の一部や海外半導体大手、国内事業会社などが出資した新会社がルネサスから鶴岡工場を買い取る案だ。
工場閉鎖は地元経済に大打撃
それでも、工場閉鎖になれば雇用が失われ、地元経済に大打撃を与えるうえに、ルネサスも特別退職金や固定資産の除却損など膨大な損失を計上することになる。一方で、独立という形で売却して切り離してしまえば、工場リストラというルネサスの目的にもかなう。
しかし、この計画はルネサス本体に出資、筆頭株主となる産業革新機構が動けなくなり、資金や先行オーダーの獲得にも難渋したことで、ほぼとん挫していた。ところが、当初スキームとはカタチを変えながらも実はまだ独立案自体は生きており、しかもここへ来て実現できる可能性が出てきた。
今から1カ月ほど前。国内のある大手メーカーから鶴岡工場に大口案件の打診があった。この商談がまとまれば、鶴岡工場の稼働率は大きく改善することになる。
まず、この大口案件があれば、当面のビジネスプランを立てやすくなるため、独立以降の事業計画は描きやすくなる。実際、ほぼ止まっていた独立計画がにわかに動き出した。
にもかかわらず、ルネサスの鶴丸哲哉社長がこの提案を検討することもなく一蹴してしまった。
いくら大口案件とはいえこれを頼みにルネサスとして鶴岡工場を存続させるべきとはいえないものの、ろくに検討もしないで蹴ってしまったのは問題ある判断だ。