「安部公房とわたし」の真実

女優・山口果林に聞く大作家の実像

――本ができると、いつも本にサインをして贈られていた。

学生時代は本名の「静江君」、その後は「果林君」「果林」という宛名付きで。全部とってあります。私とのおつきあいを証明する唯一のものかもしれない。

――本にもその写真が載っていますね。当時の手帳を写した写真もありますが、これがなんと能率手帳なんですよね。女優さんですし、エルメスの手帳でもお使いなのかと思いましたが…(笑)。

ブランド品への執着がまるでないの。50歳になってフルートのレッスンにトライしようと、折り込み広告にあった無料体験に申し込んだら、友人たちに「恥ずかしくないの」なんて言われるんですが、こだわりがないんです。

新しいモノへのアンテナを持っていた

――安部公房さんも、服装には無頓着だったことが書かれています。メルセデスベンツに乗っていた当時、「高級旅館に予約なしで飛び込んでもほとんど断られないところが良い」と言っていたそうですね。そのあたりも似ていた…。

安部公房さんは若い頃、ラリーに出ていたというほどクルマ好きなんですよね。お父さんもそうだったと聞きました。マセラティ、ランボルギーニについて「ああいうクルマは運転席からたばこが地面で消せるらしいよ」なんて話すんですが、乗りたい車だとは言っていなかった。

――主な関心は、ちょっとおもしろい小物とか、そういうものに主に向いて。

そうですね。「モノ・マガジン」が大好きでした。カメラ雑誌やクルマ雑誌も。

安部公房スタジオがアメリカ公演をしたときに舞台上で布を使ったのですが、それはとても画期的だったそうです。ちょうどよく伸びる新しい素材が出てきた時代だったんですよね。それをいち早く手に入れて……。その後、海外の舞台で使わるようになったそうです。それも、新しいモノへのアンテナを安部さんが持っていたからだと思う。

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