四国の野球「独立リーグ」、今も見えぬ未来図 生き残りに向けて、所属4球団が続ける挑戦

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高知県は、四国の4割近い広い面積に、人口は4県で最少の73万人。高知ファイティングドッグスは、経済的に大きなハンデがある中で、運営を続けてきた。

当初、本拠地の高知市野球場にはナイター施設がなかった。真夏でも炎天下のデーゲームしかできなかった。市には予算がなかったので県に掛け合い、2012年になって照明をつけてもらった。球団のスポンサーを求めて高知県の市町村をくまなく回り、200以上の契約を取り付けた。

地域貢献にも力を入れてきた。野球教室やイベント参加だけではない。球団は農業事業部を立ち上げ、選手たちは牛を飼い、作物を作った。

一方で、2015年にはMLB帰りの藤川球児投手、そして今年はマニー・ラミレスを獲得するなど、話題性に富んだ施策を次々と展開。今の総監督は高知県出身で、阪神タイガースなどで活躍した江本孟紀、監督は読売ジャイアンツと横浜ベイスターズで活躍し、2000本安打を達成した駒田徳広だ。何もしなければ、球団経営には不利な高知県。そこを本拠地にしているからこそ、なりふりかまわぬ活動ができるのかもしれない。

北古味副社長は「高知には"おカネを払ってスポーツを見る"文化がなかった。それを根付かせたのはウチですよ」と胸を張る。観客動員は前年比60%増、3期連続での黒字をほぼ確実にしている。

7月末までの契約だったマニー・ラミレスも、9月末までこれを延長。後期シーズンも出場することが決まった。

「独立リーグは、大学のようなもの」

全国区の話題性で先行するのが高知だとしたら、香川オリーブガイナーズは、人呼んで「四国の常勝球団」。独立リーグ「四国アイランドリーグplus」は13シーズン目を迎えるが、香川は前後期合わせて最多の13回優勝している。

NPBに送り出した選手も最多の25人。なかには、いまや中日ドラゴンズの投手陣の柱というべき又吉克樹もいる。又吉は四国リーグ史上最上位のドラフト2位で中日に指名された。契約金は6000万円、このうち10%が香川オリーブガイナーズに支払われた。選手の年俸が150万円ほどの独立リーグでは小さな金額ではない。又吉は翌年の香川の開幕戦に「祝開幕」と書かれた花輪を贈った。「人格的にもすばらしかった」と関係者は語る。

チームの指揮を執るのは西田真二。PL学園時代には甲子園の優勝投手になっている。法政大を経て広島に入団し、代打の切り札として活躍。香川の監督に就任したのは2007年のことだ。2~3年で監督が交代することが多い独立リーグで、11年目のシーズンを迎えている。

「独立リーグは、私に言わせれば大学のようなものですね。先輩から後輩へ、野球やいろいろなものを伝えていく。こうして伝統ができていくわけです」(西田監督)

チームは毎年半数が入れ替わる。ドラフトで主力選手が抜けていく。その穴を埋めるために、西田は各地を回り選手をスカウトする。西田のスカウト能力がチームを支えてきた側面もある。

最近は、他球団も積極的に選手をスカウトするようになった。選手の獲得が難しくなったこともあり、チームは優勝から遠ざかっている。期待した選手がシーズン途中でチームを離れることもあった。「ま、そういうこともふくめて野球や、ということですな」。少し遠くを見やるようにして、西田は語る。

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