四国の野球「独立リーグ」、今も見えぬ未来図 生き残りに向けて、所属4球団が続ける挑戦

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球場を訪れた客を出迎える、香川オリーブガイナーズの三野環社長(筆者撮影)

香川は経営者が昨年で交代し、高松市内の老舗企業の経営者がオーナーになった。

このオーナーが社長に指名したのは三野環(みの・たまき)という女性だった。「お話をいただいて、驚きました。私は保険の営業をしていてまったくの畑違いだったもので。でも、熱心にお誘いいただいたし、家族も理解してくれたのでお引受けすることにしました」

2017年2月に球団社長に就任。今も球場の入り口で、観客を出迎えている。一人ひとりのお客に丁寧にあいさつをする。“美人すぎる球団社長”と評判にもなった。営業のプロとして、スポンサーの獲得に期待がかかる。「目標は、観客動員2000人、そして優勝です。夫も娘も応援してくれていますし、頑張ります」。

今年から巨人、西武、中日で投手として活躍した河原純一を監督に迎え、新体制でシーズンに臨んでいるのが愛媛マンダリンパイレーツである。

神奈川県出身の河原は、NPB球団を退団後、2013年から愛媛で投手として投げた。引退後は球団の運営会社「星企画」の社員として野球の普及活動などを担当。今年から監督を務める河原は、愛媛県の野球人口減に危機感を持っている。「野球王国と言われる愛媛県ですが、去年、県内を回ってみて、野球をする子供が減っていることに驚きました。僕らが野球をすることで、もっと盛んにしたいですね」。

河原は今も時間が許せば、球場に行く前に幼稚園などで野球教室を開いている。愛媛マンダリンパイレーツは、過去2年、リーグの総合優勝を飾ってきた。しかし前監督の弓岡敬二郎がオリックス・バファローズに復帰。今季は目先の勝利ではなく「人材の育成」をテーマに据えた。河原は、「前半戦はキャンプの延長と考えて選手を鍛えていく」と先を見据えている。

「愛媛県民」がマンダリンパイレーツのオーナー

実は、この球団の経営体制はとてもユニークだ。2006年、四国アイランドリーグの各球団は、それぞれ企業として独立して経営してきたが、愛媛には新しい経営者が現れず、そのためにこれまで愛媛の球団関係の広告を担当してきた松山市の広告代理店「星企画」が経営を引き取った。しかし、赤字は年々かさみ、親会社の経営を圧迫。そこで2010年、愛媛県、松山市など県下のすべての自治体、主要な金融機関が出資して「愛媛県民球団株式会社」が発足。チームのオーナーは「愛媛県民」になった。

「県民球団」を名乗る独立リーグ球団は他にもあるが、純然たる県民球団は愛媛だけだ。星企画という企業が、県下の自治体や企業と深いつながりがあり、信用を得ていたことが大きかった。また愛媛県はサッカーの愛媛FC、バスケットの愛媛オレンジバイキングスにも出資している。そういう土地柄でもあるのだ。

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