スカイマーク、復活をかける「無遅刻」の誓い 航空会社にとって「定時出発」が超重要な理由

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日本政策投資銀行常務からスカイマーク社長に転じた市江正彦社長は次のように指摘する。「定時運航率が悪いことが課題でした。正規の普通運賃で乗っていただくことが多いビジネス客は遅れがちの飛行機を敬遠します。そうなると安売りをして席を埋めなくてはなりません」。つまり、定時運航率の悪さが、低収益を招いていたということだ。

「定時運行率が悪くて、席の安売りにつながってしまう課題があった」と振り返る市江正彦社長(筆者撮影)

スカイマークで出張に行ったがためにお客との約束に遅れたり、電車の乗り継ぎに間に合わなかったりすれば、二度とビジネス客は使わないだろう。

その代わりに乗ってもらえるのが長期休暇の何カ月も前から安売り航空券を買う旅行者である。安く買っているから定時運航にはあまりこだわりはない。

航空会社が陥りがちな「負のスパイラル」とは

そんなお客ばかりを相手にしていては、航空会社のほうも定時運航への真剣さが薄れてしまう。負のスパイラルに陥ってしまうのだ。そこから抜け出さないと、航空会社の収益向上はおぼつかない。

昨年10月、市江社長を本部長とする「定時性対策本部」がつくられた。整備、空港、客室乗務員、パイロットなど関連部署が横断的に集まった。定時運航を目指すために会社全体で本格的に取り組むのはスカイマークでは初めてだった。それまでは各部署が縦割りで取り組んではいたが、連携が不十分だった。

定時に出発するには客をできるだけ早く機内に誘導したほうがいいが、整備が完了し、パイロットが飛行機を外から最終点検したうえで、コックピットに入らないと客は機内には入れない。パイロットと運航管理部とがその日の気象条件や航路などの注意点を打ち合わせる会議が遅くなれば、パイロットのコックピット入りは遅くなり、客は搭乗ゲートの外で待たされる。

定時運航を守るには、客と接するチェックインカウンターや搭乗ゲート周辺の担当者から整備担当者、客室乗務員、パイロットに至る総合的な連携がなくてはならない。

スカイマークの場合、幸いだったのはすべての部署で働く者がスカイマーク社員だったことだ。大手のように一部の担当部署が別会社になっているのとは違って、連携のわだかまりは少なかった。連携の効果が出ればどの部署にも恩恵が行き渡る。

定時性対策本部(今年2月からは定時性向上員会に衣替え)で議論され、実行に移された施策は地味で細々としたことが多いが、チリも積もれば山となる。業務改善は大上段に構えても効果は出ないものだ。

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