サマーズ?イエレン?次期FRB総裁レースの行方 FRBの出口戦略から見える課題と、日銀への示唆(上)

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7月17~18日の米議会証言では、多くの議員がバーナンキFRB(連邦準備制度理事会)議長に対して、来年1月末の退任を前提にねぎらいの言葉をかけていた。現時点の後継者レースは、FRB副議長のジャネット・イエレンと、元財務長官のラリー・サマーズの2人の“一騎打ち”のように米メディアは報じている。

筆者は、金融政策に深く通じている実力派という意味では、前FRB副議長のドナルド・コーンがよいのではないかと思う。しかし、オバマ政権にとっては、彼では政治的な華やかさに欠ける面があるようだ。前財務長官のティモシー・ガイトナーも候補者のひとりとしてよく名が挙がっていたが、彼自身はその気がないことを明言している。次のFRB議長は出口政策で大変な苦労をする確率が高いだけに、そういった気持ちになるのも理解できる。

ところで、ブッシュ前大統領がグリーンスパン前議長の後任としてバーナンキをFRB議長に指名することを明らかにしたのは、2005年10月24日だった。グリーンスパンの任期終了は2006年1月31日だったので約3カ月前の発表だった。さらに、レーガン大統領がボルカー元議長の後任にグリーンスパンを指名したのは、ボルカーの任期終了の約2カ月前の1987年6月2日だった。それらを考慮すると、現時点での後継者議論は時期的にまだ早すぎることがわかる。

おそらくホワイトハウスは、候補者の名前をマスメディアに漏らすことで、彼らの評判をチェックしているのだろう。

イエレンはFOMC内のタカ派をグリップできるか

仮にイエレンが選ばれれば、彼女はこれまでのFRBの異例の緩和策の経緯を知っているだけに、コミュニケーションにおいて継続性を保つことができるだろう。彼女はサンフランシスコ連銀総裁だった2005年に「住宅価格が異様な高さになっていることを分析は確かに示している。それはバブルの要素のひとつだ。疑いなく反転が起きうる」と住宅バブルの危険を的確に警告していた。

一方、彼女は現時点ではバーナンキ以上のハト派であるため、金融政策正常化にかける時間はより長くなるだろうとの観測から、米長期金利はいったん低下傾向になる可能性が考えられる。

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