サマーズ?イエレン?次期FRB総裁レースの行方 FRBの出口戦略から見える課題と、日銀への示唆(上)
もしオバマがサマーズを指名すると、上院での承認手続きは紛糾し、1月末にバーナンキ議長の任期が切れても次期議長が決まらないおそれすら出てくるだろう。その場合は、次期議長が上院で承認されるまでの間はバーナンキが臨時議長となる。
QE3縮小の妨げとなるモーゲージ金利急騰
FRBがQE3の減額を年内に開始することを、市場はすでに織り込んでいる。しかし、それが9月なのか、あるいは、10月、12月なのかはまだ不透明である。
バーナンキ議長を含むFOMCメンバーも揺れている。ロックハート・アトランタ連銀総裁の8月13日の発言がそれを象徴している。「(次回9月のFOMCまでに)私が経済見通しに確信を得るのに十分なデータがそろうとは予想していない。9月であれ、10月であれ、12月であれ、減額の決定は、“慎重な最初のステップ”と見なされるべきである」。
QE3が開始された当初は、この政策が終わる条件は「労働市場の顕著な改善」であるとされていた。しかし、5月22日にバーナンキがその年内縮小を示唆して以来、代表的な住宅ローン金利である30年固定金利モーゲージは爆騰した。それは年初には3.4%前後だったが、6月後半には一時4.6%を超えた。
今回の米国の景気回復を牽引しているのは住宅市場の改善である。金利急騰でもし住宅需要が失速したら、QE3の縮小には着手できなくなる。それゆえ、7月の議会証言でバーナンキは、「金融状況を注視する」と繰り返し述べた。7月31日発表のFOMC声明文にも、モーゲージ金利の上昇を警戒する一文が盛り込まれた。
FRBがQE3の減額開始条件に、労働市場の改善だけを挙げてきたのならば、7月の雇用統計は9月の減額開始を妨げるほどの悪い内容ではなかった。だが、上記のように、モーゲージ金利急騰の悪影響をFRBは確認しようとしている。その懸念を脇に置くことができるほどの力強さは、7月雇用統計にはなかったと言える。
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