サマーズ?イエレン?次期FRB総裁レースの行方 FRBの出口戦略から見える課題と、日銀への示唆(上)

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縮小

FOMCメンバー全体が資産買い入れ縮小を9月に開始することに、どの程度の「思い入れ」を持っているかは、8月21日発表のFOMC議事要旨で明らかになる。それと、次回FOMC(9月17~18日)までの経済指標を見ながら市場の予想は動いていくことになる。

債券売却なら巨額損失、自然減による償還に傾く

バーナンキの背中を強く押す材料が今ひとつ出てこない場合は、その次のFOMCまで減額開始判断を先送りするか、あるいは、9月に100億ドルという小幅減額からスタートする可能性が出てくるだろう(現時点の市場では、資産買い入れ減額に着手する場合は、現行の月850億ドルを1回目は200億ドル減らすという見方が多い)。もし小幅減額の場合は、QE3終了時期は来年半ばよりも後ずれする可能性が高まる。

タカ派とハト派の間の強弱はあるとはいえ、多くのFOMCメンバーは現行の資産買い入れ策をだらだらと続けていてはまずい、という認識を持っている。その第1の理由は、スタイン理事を筆頭とするバブル警戒が挙げられる。第2の理由は、より多くのメンバーが抱いている、FRBの資産が膨張すればするほど、先行きの出口政策の困難度が高まって行くという恐怖感である。

金融危機後にQE1、QE2(LSAP1、LSAP2)を行っていた頃は、バーナンキを含むFOMCメンバーは、「市場から購入した証券は景気回復後に売却すればよい」と安直に考えていた。それゆえ、2011年6月のFOMCでは、MBS(モーゲージ証券)をすべて売却する出口戦術でコンセンサスが形成された。

しかし、昨年12月のFOMCにFRBスタッフが提出した、証券売却時に発生しうるFRBの巨額損失のシミュレーションを見て、多くのメンバーは出口政策時の深刻な政治的困難を悟った。FRBが巨額損失を発生させると、議会が怒り、FRBの独立性を事実上、剥奪する法案を通そうとするおそれがあるからである。その結果、最近のFOMCメンバーは保有証券を売却しない出口政策に傾いている。売却しないということは、償還による自然減を待つことになる。それには気の遠くなる年月が必要となる。(下)はこちらをお読み下さい。
 

加藤 出 東短リサーチ社長

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かとう いずる / Izuru Kato

1988年、横浜国立大学経済学部卒業、東京短資入社。金融先物、CD、CP、コールなど短期市場のブローカーとエコノミストを2001年まで兼務。02年2月よりチーフエコノミスト。13年2月より東短リサーチ代表取締役社長。短期金融市場の現場から各国の金融政策を分析。『日銀は死んだのか?』『バーナンキのFRB』『日銀、「出口」なし! 異次元緩和の次に来る危機』  など著作多数

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