タイ人が名古屋の「甘辛い料理」に夢中なワケ 実はバンコクでは「名古屋めし」がブーム

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肝心の味はケチャップで味付けした、どこか懐かしく、素朴な味わい。半熟に仕上げた卵に絡めて食べるとよりうまい。まさか、バンコクで名古屋の喫茶店の味が堪能できるとは――。感動すら覚えた。

手羽先が名古屋よりもうまい理由

スクンビット通り39を歩いていると目に飛び込んできたのが「世界の山ちゃん」のキャラクター、「鳥男」の巨大なフィギュア。名古屋でも見たことがない。しかも、「日本名古屋料理」と看板のあちこちに書かれ、名古屋めしであることが強調されている。

早速、入店して、看板メニューの「幻の手羽先」を注文。肉厚でカリカリの皮をかむと、ジューシーな肉汁がほとばしる。むしろ、名古屋で食べるよりもうまいかも。隣に座っていた中国人カップルもタレがついた指をなめながら、夢中で手羽先を頬張っていた。

手羽先は前出の「サガミ」でも食べたのだが、こちらもかなりおいしかった。後から聞いた話では、日本の居酒屋などで食べる手羽先は、実はタイが輸入元で、日本には冷凍されて出荷される。そのため、「世界の山ちゃん」に限らず、地元で食べる手羽先の唐揚げは、スパイシーな味付けが先行してしまい、肉の味をあまり感じられないものが多い。一方、タイでは地元産。チルドのものを使うので、なるほど、うまいはずである。

「世界の山ちゃん」では、ほかに「みそ串かつ」や「天むす」などを注文したが、どれも食べ慣れた味だった。が、他店でもそうだったように、揚げ物の衣が分厚かった。

5泊6日の取材でさまざまなものを食べたが、タイで名古屋めしが人気なのは、ピリ辛で濃厚な味付けがタイ人の味覚にマッチしたからではないだろうか。特に手羽先は、日本食レストランでも定番メニューになっているほどだ。

飲食店のタイ進出支援や日本とタイ企業とのマッチングを手掛けるジーエフキャピタル・タイランドの岩原勝マネジングディレクターは言う。

「甘辛い味付けのほか、クリスピーな(ぱりぱりした)食感もタイ人には好評だ。名古屋の手羽先は、まさにど真ん中の味。その観点からすると、次にブームとなるのは、ひつまぶしではないかと考える」

名古屋めしは、単なる郷土料理ではなく、和・洋・中の料理人が知恵と工夫で生み出したものが多い。それだけに海外で受け入れられやすいのだろう。タイでの人気を皮切りに、「NAGOYA-MESHI」が国際語になる日が来るかもしれない。

永谷 正樹 フードライター、フォトグラファー

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ながや まさき / Masaki Nagaya

名古屋を拠点に活動するフードライター兼フォトグラファー。

地元目線による名古屋の食文化を全国発信することをライフワークとして、グルメ情報誌や月刊誌、週刊誌などに記事と写真を提供。

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