NHK「クロ現」の生命保険特集は、秀逸だった 「商品ありき」ではない番組作りに好感

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筆者が補足したいのは、高い手数料が得られる商品の販売を促されるのは、銀行や保険ショップなどの窓口の人に限らず、特定の保険会社に所属する営業担当者も同じであることです。

一般の消費者は、一社専属の営業担当者のほうが、保険ショップの販売員より、商品の選択肢が少ない分、顧客との利益相反が大きくなる可能性も想像したほうがいいはずです。

したがって、「利益相反」を抑えるには、ライフネット生命の創業者である出口治明さんがおっしゃっていたように、顧客が代理店などに「手数料を尋ねる」ことだと思います。

ただ、筆者はさらに一歩進んで「手数料等が引かれたあと、最終的に加入者に還元される保険料の割合(還元率)はどれくらいになるのでしょう」と聞いてみることをお勧めしたいと思います。

手数料は、商品価値を考えるうえで大きな手掛かりではあるものの、保険会社の経費の一部にすぎないからです。現実問題として、保険料の還元率を知る人は、保険会社の中でもわずかだと思われます。

だからこそ、確認する人が増えたほうがいいのです。保険は加入者による「助け合い」の仕組みであると説明されているのですから、加入者が「保険会社の取り分次第では、助け合いは『建て前』にすぎなくなる。最も重要な情報として共有したい」と主張するのは当たり前だと思うのです。

元本割れ期間の長さが大きなリスク

4 「保険で貯蓄」は考えない

内藤さんの「保険で貯蓄というのは、もうやめたほうがいいと思います」という発言も重要だったと思います。保険料が「掛け捨て」になることを嫌って、積立部分がある「終身保険」に加入し、保険料負担が重くなっている人に対し、元本割れ期間の長さ(番組で紹介された加入例では28年間もありました)が大きなリスクであることを指摘し、解約を勧めていたのです。

そもそも保険の利点は、「まとまっていないおカネ(保険料)」で「まとまったおカネ(死亡保険金や入院給付金)」を用意できるところにあります。それは、加入者が出しあうおカネが、不幸があった人などのために使われ、何事もなかった人には払い戻しされない「掛け捨て」の仕組みにより可能になることです。

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