あなたの気持ち、めちゃくちゃよくわかりますよ。多くのワーキングマザーが共感するのではないでしょうか。世の中、保活がうまくいかずに復職をあきらめた人がいたり、夫が妻が働くことに前向きでなく、何もかもを抱えてくたくたになっている人もいる。子どもに病気や障害があって苦しむ人、職場の理解があまりなくてストレスに苦しむ人、実家からのフォローが望めなくて日々の対応に悩む人……個々がそれぞれの事情を抱える中では、あなたは、あなたの言うとおり、きっととても恵まれた環境にいるのだと思います。
しかし、夫や職場、実家の協力など「全部そろっている」状態ならば、育児と仕事との両立に問題はなくまったく悩まずに済む、なんてことがあるわけありません。あなたは、自分が悩んでいることにさえ「罪悪感」を感じているような気がして、私はなんだかとても胸が痛くなりました。初めての両立生活なんですから、悩んでジタバタして当たり前です! 誰にだって新米の時期はあるのです。あなたの周囲の、仕事もプライベートもキラキラ輝いているように見える先輩女性たちだって、きっとそんな時期があったはず。みんな、一つひとつ、なんとか乗り越えてきたのでしょうし、おそらく今もなんらかの問題を必死に乗り越え中なのだと思いますよ。
バージョンアップした罪悪感
私の周囲にも、第1子の出産後で復職したばかりの女性が何人もいます。彼女たちと仕事をしたり話をしたりすると、「弱音を吐けない」と自分を追い込みすぎているのかなと、最近よく感じます。
近年はワーキングマザーが珍しくなくなってきて、すてきに両立しているように見える人たちがたくさんメディアなどで紹介されるようになりました。私たちワーキングマザーは新しい罪悪感を抱えることになったのかもしれません。「みんなちゃんとやっているのに、自分は……」という気持ち。
私がときどきお仕事をお願いする新米ワーキングマザーにも、いつも謝っている人がいて、「私のせいで予定が狂ってごめんなさい」「思ったように仕事が進められなくて申し訳ない」とすごく恐縮するのです。驚きながら、「そんなこと、よくあることだから大丈夫だよ」と言っても、「でも、〇〇さんは育児があってもしっかり仕事をやりきるのに」などと自分の未熟さを嘆くので、さらにびっくりしてしまいます。彼女はとてもすばらしい仕事をする人で、周囲の評価は産前も産後も変化がなく、気に病むようなトラブルも起こしてはいないのです。「ひとりで苦しむ必要ないのに!」と感じつつ、彼女の胸に響く言葉はかけてあげられませんでした。
「あの人に比べて苦労が少ないはずなのに、うまくいかない」「私は恵まれた環境にいるのに」と自分を責めてしまうまじめなワーキングマザーが増えているように感じます。以前は、かけられる時間が限られることから「家事や育児がちゃんとできていない」という罪悪感を抱えて、仕事か育児かの選択を迫られがちだったワーキングマザーたちが、昨今は「もっと両方うまくいくばずなのに」「私の頑張りが足りないのではないか」と、以前よりかなり“バージョンアップした罪悪感”を抱えるようになってきたように思えてならないのです。
CMとかドラマに出てくるような、かっこいい完璧なスーパー・ワーキング・マザーなんて、ほとんど実在しないと思いますが、私たちに新しいステレオタイプの母親像が植え付けられ始めているような気さえしてきます。事情はそれぞれで、正解の姿だってそれぞれのはずなんですけどね。
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