「親に反抗し始めた子」への過干渉は危ない 学校をやめてしまったケースもある

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1)何をしないほうがいいか(Do less)

はじめに、何をしないほうがいいかを考えます。通常、「何をしたらいいですか?」と問われることはあっても、「何をしないほうがいいですか?」とは聞きませんね。しかし、問題が起こっているときは、やりすぎていることが少なくありません。岩崎さんの場合も、これまでやりすぎていた可能性があるでしょう。そこで次のような対応を心掛けるとよいでしょう。

「しばらく子どもに干渉しない」

つまり放っておくということです。必要な会話、たとえば「おはよう」などのあいさつなどはしてもいいですが、それに対しても、はじめは子どもは応えないことでしょう。応えなくても怒ってはいけません。本来は、生活習慣はしっかりと子どもが小さい時から習慣づけるのがよいのですが、岩崎さんのような状況に陥っている場合は、反応しなくても親は指摘をしてはいけません。指摘すると悪化するだけです。

勉強しても伸びていかないという状況を目にして、何かと言いたくなるかもしれませんが、いっさい触れることをしません。

2)何をしたらいいか(Do more)

何をしないかということが実現できたならば、次に、何をするかに入ります。いただいた文面では、中学受験をされるということですね。ということは、おそらく塾へ通われているのだと思いますので、家庭での事情を説明し、第三者の先生からアプローチしてもらうことの働きかけをしてみてください。もちろん学校の先生や習い事の先生など近くでお子さんのことをよく知っている方に働きかけてみるのもよいでしょう。

引いてみるというのも大事なこと

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しかし、近くにこのような人がいないという場合もあります。そのときは、特に具体的な働きかけをせずに、子どもとは世間話や雑談をするということをします。勉強以外のテーマでしたらいいでしょう。ただし注意しなくてはならないことは、このような手段を取られた結果、子どもの勉強が伸びてきても、親からの心配事や過干渉は禁物です。かつて、私は次のような経験をしたことがあります。

お父さんが自分の子どもの勉強が心配で、なんでも先回りして「あれをやれ、これをやれ」と指摘をした結果、いっぱいいっぱいになり、動けなくなってしまった子がいました。そこで相談を受け、いっさい勉強に親は干渉しないと決めると同時に、私が子どもと会って、学習に対するモチベーションを高め、さらに勉強方法を指導したところ、みるみる回復し、学力がぐんぐん伸びたのです。しかし、その後それに安心したお父さんは、また子どものことに介入してしまいました。そこで”The End”となってしまったのです。つまり、子どもはもう二度と積極的に勉強をすることはなくなり、学校にも行かなくなってしまったのでした。

子どもが伸びたからといって、初めの失敗した対応方法に戻してしまうと、親子関係もあっという間に元に戻ってしまうということなのです。

いずれにしても、親が少し距離を置いてみることが肝要です。目先の受験が気になり、つい何か働き掛けたくなってしまうかもしれませんが、引いてみるというのも大事なことです。お子さんとの関係づくりがうまくいくことを祈っています。

石田 勝紀 教育デザインラボ代表理事、教育評論家

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いしだ かつのり / Katsunori Ishida

1968年横浜生まれ。20歳で起業し、学習塾を創業。4000人以上の生徒に直接指導。講演会やセミナーを含め、5万人以上を指導。現在は「日本から 勉強が嫌いな子を1人残らずなくしたい」と、Mama Cafe、執筆、講演を精力的に行う。国際経営学修士(MBA)、教育学修士。著書に『子ども手帳』『子どもを叱り続ける人が知らない「5つの原則」』、『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば』ほか多数。

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