「同一労働・同一賃金」の実現こそが不可欠だ 長時間労働の是正だけではハッピーじゃない

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労働生産性の上昇が賃金上昇につながるのか(写真: Gearstd / PIXTA)

安倍晋三政権が重要政策として推進する働き方改革。「長時間労働の是正」と「同一労働・同一賃金」の制度作りが先行しており、これらの取り組みが労働生産性の改善を通じて賃金の上昇、需要の拡大を通じた経済再生につながるとしている。はたして、そうだろうか。働き方改革の経済的効果はどのようなものだろうか。

労働生産性は、生産における労働力の効率性のことだ。具体的には就業者1人当たり、あるいは就業1時間当たりでの「生産量」がどれほどかで示される。その際、生産量を、何台の自動車といったように物的な量で表すものを「物的労働生産性」、金額(付加価値)で表すものを「付加価値労働生産性」という。

両者は似ているようで実は異なっている。物的労働生産性は、「一定時間内にいくつの製品を作ることができるか」であり、文字どおり、生産の効率性を表す。これに対し、付加価値労働生産性は、そういった効率性よりも、いかに高く売るかが問われる。ブランド品のように値段が高ければ、物的労働生産性が多少低くても、付加価値労働生産性は非常に高くなる。

長時間労働の是正は物的労働生産性を改善

残業削減など長時間労働の是正で、物的労働生産性が改善することはありうる。この取り組みの中で、労働者がより効率的に働き、同じ仕事のアウトプットを短い時間で達成できるようになるかもしれないからだ。ただ、企業全体で見れば、アウトプット(生産量=売り上げ)は変わらず、労働者の残業代は減るため、賃上げが行われないかぎり、企業の受け取る利益が増えることになる。

物的労働生産性が改善すること自体は、経済発展のために大切なことだ。物的労働生産性が高まれば、労働力に余剰が生まれ、その労働力が新たなサービスや製品の生産に携わることでわれわれの実質所得は向上する。

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