フクシマにトルコ、世界でウソが蔓延中だ

3大映画祭を制したファティ・アキン監督に聞く

今回の反政府運動においてもソーシャルメディアを通じて、とても意味のある方法でユーモアが用いられている。僕はユーモアこそ道徳をもたらすと思っているのだ。映画を作るとき、映像の中にほんの少しでもユーモアを見つけたら、僕はそれをつかみ上げる。そして、それを逃がさないうちに映画の中に入れ込むのだ。なぜならシリアスな瞬間、悲しい瞬間、メランコリックな瞬間、そしてユーモアのある瞬間が、映画をより豊かにしてくれるから。ユーモアは人間そのものだ。

――ユーモアは人間そのもの?

そうだよ。でも、この映画の中のユーモアは僕が作ったんじゃない。登場する人々がもともと持っていたものであって、僕はそれを映画に用いただけさ。「これは楽しい!」「これは皮肉だ!」と思ったら、それは映画に生かすべきだよ。

黒海出身者はカリスマ性がある?

――映画の登場人物は全員が本物の村人なので、当然、演技も素人。それでも、俳優以上にキャラが立っている人が多いのに驚きました。

僕はあの村に長年滞在し、人々を追いかけていた。そして、最も重要な人物を探していた。彼らはとても強い個性を持っていて、カリスマ性があった。おかげでドキュメンタリーにぴったり合ったんだ。

――トルコでは黒海の人間はカリスマがあると言われていますね。あなたも黒海出身、そして、エルドアン首相も黒海出身ですが。

ハハハ、エルドアンもそうなんだよ。黒海の人間はほかのトルコ人とちょっと違うのだ。特に僕も含めてトラブゾン出身者は。トラブゾンはかつて1970年代には労働組合が強く、左翼だった。その後、1980年代には極右に変わった。そして今、トラブゾンではとても宗教色が強まっている。もはや左翼でも右翼でもない。このようにトラブゾンはつねに変化しているんだ。トラブゾンだけでなく、トルコの北部の人間は一般的に、あまり話をしたがらない。しかし、いったん話したとなると、それを必ず実行するんだ。それほど強い。でも、エルドアンはしゃべりすぎだね(笑)。

ファティ・アキン(Fatih Akın)

1973年生まれ。トルコ系ドイツ人2世。俳優を志したが、トルコ移民役などステレオタイプの役柄ばかりなことに嫌気がさし、ハンブルク造形芸術大学へ進学。95年、監督デビュー作となる短編『SENSIN…YOU‘RE THE ONE! 』を発表、同作でハンブルク国際短編映画祭で観客賞を受賞。初の長編映画『SHORT SHARP SHOCK』(98年)ではロカルノ映画祭の銅豹賞など9つの賞を獲得。偽装結婚から生まれる愛を情熱的に描いた『愛より強く』で、2004年ベルリン国際映画祭金熊賞(グランプリ)をはじめ、04年ヨーロッパ映画祭最優秀作品賞など数々の賞に輝く。『そして、私たちは愛に帰る』で07年カンヌ国際映画祭最優秀脚本賞と全キリスト協会賞を受賞。『ソウル・キッチン』(09年)ではドイツで100万人以上を動員するヒットとなるとともに、09年ベネチア国際映画祭審査員特別賞を受賞。

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