僕たちの資本主義は終わりに近づいている
――村人を犠牲にしたのですか?
そう、彼らは犠牲にされたのだ。僕はゲジ公園の問題が起こる以前からこの映画を作っていたし、ドイツに住んでいるけれど、僕と今回の反政府運動の中心にいる人々は同じ世代だと思う。この映画は反政府運動と同じ心と同じ抵抗、トルコに対する同じ責任を背負っていると思う。
――ブラジルのリオ・デ・ジャネイロでも同じような反政府運動が起きています。2年前にはオキュパイ・ウォールストリートやアラブの春も起きました。
世界は変わりつつあるんだよ。僕たちは資本主義の終焉に近づいているのだと思う。国も経済も毎年成長するというというのはウソだよ。資本主義では毎年成長することが重要。でも、もうこれ以上の成長はない。限界に達したのだ。さらなる成長を望めば、僕たちは破滅するだろう。これ以上、海の魚を採るなら、魚はいなくなる。海水をこれ以上汚せば僕たちは生きていけなくなる。世界中どこでも同じことだ。ひとつの惑星に住んでいるのだから。
ここで僕たちは未来の世代のために変化しなければならない。それを特に若い人々は気づいている。この世界、そして、未来は子供や若者のためにある。年寄りはやがて死んでしまう。この惑星の若者たちはソーシャルメディアを通じて意見を交換している。経済がもうこれ以上、ウソをつけないことを知っているのだ。
――以前、あなたはカンヌ映画祭のインタビューで「映画は何かを変えることができる」と言いました。では、逆に映画を作ることがあなた自身の何かを変えたことはありますか?
もちろん! どの映画も僕の人生を変えてきた。映画作りは一生の仕事だよ。この映画は5年かかった。5年間、僕は行ったり来たりを繰り返したんだ。映画を作った後の僕は、作る前の僕とは違う人間だよ。でも、世界を見れば、変化は僕個人とは関係なく起きている。
その一方で、僕はインドの思想家ジッドゥ・クリシュナムルティの哲学、「すべての人間は世界とつながっている」を信じている。僕の存在は今トルコで起きていることと絶対につながっている。日本で起きていることとも、ブラジルやアラブ諸国で起きていることともつながっている。僕の行いとつながっている。僕の映画は世界に大きな衝撃を与えた、とまでは言わないよ。でも、この惑星に魂があり、僕たちはその魂の一部であることを僕は信じているのだ。
――映画はとてもシリアスなテーマを描いていますが、あなたのほかの作品と同じように、つねにユーモアがあふれています。シリアスな映画にユーモアを入れるのは難しいのでは?
映画は人間を描くんだ。そして、ユーモアは人間性の中で大きな場所を占めている、特にトルコ人はね(笑)。
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