ベンツを形作る「秘密の本拠地」に行ってみた ドイツのデザイン・センターに何があるのか

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

そうしたメルセデスの高い実績とそれがもたらした人気は、プロダクトの見え方にある種の影響を与えている。日本でもよく語られる「メルセデスは居丈高だ」「オーナーが偉そう」という話もあるけれど、ここで問題にするのはそのことではない。つねにテクノロジーの最先端にいるうえに、”最善か無か”とスローガンに謳うほどの品質における完全主義、そして高額モデルの多さからくる一般との隔たり感などといったことがあいまって、高嶺の花=近寄りがたさ感が強く、どこか冷たい印象を与えてしまう、というブランド認知のあり方のことだ。

(左)コンセプトEQと非接触充電パネル。ゴードン・ワグナーはクルマのみならず周辺機器、コーポレートデザイン、デジタルグラフィックなどにも責任をもつ/(右)ゴードンはまた乗用車に加え、バン、トラック、バスのデザインも手がける

2008年にゴードン・ワグナーがチーフ・デザイン・オフィサーとしてメルセデス(のみならずダイムラーAGの全ブランド)のデザインを統括するようになってから登場したプロダクトは、そうした認知の偏りから脱却しようとした意思を体現している。Aクラスはじめとした身近な存在であるべき一連のコンパクトカーも、高性能の極地ともいうべきAMG GTも、その点では変わらない。今回、彼らが「Design Essential」と銘打って、ドイツ・ジンデルフィンゲンのデザインセンターを公開し、ゴードンをはじめとするデザイナーたちがプレス相手に丁寧に説明する機会を設けたのも、ブランド認知の枠組みそのものを変えたいという昨今の戦略の一環である。

相反する要素の両立を目指す

採光を考慮してガラス面が多く、屋根にも特殊なシェードが設置されたデザインセンター内は当然のことながら一切撮影禁止。カメラを持ち込むことはできず、さらに各自の携帯電話のカメラレンズ部分に厳重にシールまで貼られるのだった。

この日、我々はセンター内のさまざまなセクションを訪れ、コンセプトカー、開発中のクレイモデル、モニター上のCADイメージ、それに手描きのスケッチなどを見ることができた。過去数年の間に世界各地で発表されたコンセプトEQ、ヴィジョン東京、F015ラグジュアリー・イン・モーション、AMGヴィジョン・グラン・ツーリスモ、マイバッハ6などのコンセプトカーが同時に同じ場所にあるのを見るのは壮観だ。

次ページ「Sensual Purity」をいかにデザインに盛り込むか
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事