速報を流さない「スロー報道」が人気化のワケ 「なぜ?」に切り込むスロージャーナリズム
「コレスポンデント」を参考にして、同様のサービスを作り上げたのがデンマークの「ゼットランド(Zetland)」だ。大手紙に勤めていた4人のジャーナリストが立ち上げた。購読料は月では99デンマーククローネ(約1600円)、年間では996クローネ。
出版するオリジナルの記事の本数は毎日、3~4本。あえて本数を少なくしている。「私たちはあふれるような情報を毎日受け取っている。厳選した記事だけを届けたい」(リー・コースガード編集長談)。同時に、毎朝、大手報道機関の記事を要約し、「これだけは読むべき」というレコメンド情報も送っている。
読者との交流イベントも
「コレスポンデント」のように、読者と交流するイベントの開催にも力を入れている。時にはチケットが売り切れになることもあるという。会員数は約7000人で、来春までに1万6000人に増やすのが目標だ。この数字を達成しないと損益分岐点に達しないのである。
既存の大手ニュース機関にもスローの概念が入ってきた。英BBCは最近、「スロージャーナリズム」「スローニュース」の必要性について局内外で語るようになった。
ほかのメディアに先を越されないよう、連日勝負するBBCだが、昨年9月、ニュース部門の責任者を長い間務めてきたヘレン・ボーデン氏が退任前のスピーチで「スローなニュース」の必要性を指摘した。日々のニュースを追いかけるテレビは十分な説明を視聴者にしていないのでないか、と。
BBCのニュース部門を統括するジェームズ・ハーディング氏も昨年末と今年年頭、スタッフに向けてこう語っている。
BBCは「何が起きているか」を伝えることについては非常に優れているが、これからは「なぜ起きているのか」にもっと力を入れるべきだ、としている。ハーディング氏が考えるところの「スローニュース」とは、データジャーナリズム、ブログ、動画などを使って事件全体の文脈を説明するようにすることだ。
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