速報を流さない「スロー報道」が人気化のワケ 「なぜ?」に切り込むスロージャーナリズム

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スローニュースの別の例として、「リアリティチェック」というコーナーの常設化がある。ソーシャルメディアで伝わるニュースや政治家の発言、話題になっている事柄の主張が正しいかどうかを検証する。BBCワールドサービスを含むBBCの人材から専門家を集め、情報の検証に当たっている。

スロージャーナリズムはビジネスモデルとしてはどうだろうか。

『ナショナルジオグラフィック』やBBCなど大手の媒体が戦略的視点からこの種のジャーナリズムに投資することは"アリ"だろう。しかし、地球を巡る旅を続けるサロペック氏の場合、大手メディアに寄稿する形であったが、それでもナイト財団からの援助を受けていた。大規模なプロジェクトは高額になりがちだ。

カギを握るのは読者との関係

しかし、ここで紹介した中で大手メディア以外のスロージャーナリズムの実践例を見ると、それほど規模が大きいわけでも、巨額費用が必要とされるわけでもなかった。

当初の創業までにはクラウド・ファンディング、投資家からの資金投入、非営利組織からの支援を得ていた。その後は購読料、イベント料などから収入を得ながら一歩一歩進んでいた。スタッフは数人から二十数人ほど。広告は入っていないか、広告収入に依存していなかった。

スロージャーナリズム、スローニュースのビジネスモデルが成功するか否かのカギを握るのは、有料購読者だ。だからこそ、読者との関係が非常に重要になってくる。

一分一秒を争う、24時間報道体制の反動として生まれたともいえるスロージャーナリズム、スローニュース。日々忙しいからこそ、かつ情報があふれているからこそ、作り手が時間と手間をかけた、「なぜ」がよくわかる、精選された情報を得ることが希少価値となってきた。

「何が起きたか」よりも、「なぜ」を解明しようとするジャーナリズム。スローフード運動のように大きく広がっていくだろうか。

小林 恭子 在英ジャーナリスト

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こばやし・ぎんこ / Ginko Kobayashi

成城大学文芸学部芸術学科(映画専攻)を卒業後、アメリカの投資銀行ファースト・ボストン(現クレディ・スイス)勤務を経て、読売新聞の英字日刊紙デイリー・ヨミウリ紙(現ジャパン・ニューズ紙)の記者となる。2002年、渡英。英国のメディアをジャーナリズムの観点からウォッチングするブログ「英国メディア・ウオッチ」を運営しながら、業界紙、雑誌などにメディア記事を執筆。著書に『英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱』。

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