速報を流さない「スロー報道」が人気化のワケ 「なぜ?」に切り込むスロージャーナリズム

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2人は毎年3カ月を内戦で荒廃したアブハジア、グルジア(現・ジョージア)、北コーカサスで過ごし、人々の話を聞き、写真を撮った。これを紙およびデジタルで書籍として出版。2014年に冬季五輪が開催される頃になると、両者はソチの専門家としてメディアに引っ張りだことなった。

米ピューリッツア賞を2度受賞したジャーナリスト、ポール・サロペック氏は2013年から7カ年の計画で2万マイルの旅を始めている。「アウト・オブ・エデン・ウォーク」と題されたこのプロジェクトでは、アフリカ、中東、アジアを歩き、何世紀も前に人がアフリカ大陸から世界中に移住していった跡をたどることを狙う。

サロペック氏は旅の途中でツイッター、スカイプ、ブログを使って自分が見聞きしたことを世界中の読者に伝えてきた。旅費は同氏が寄稿する『ナショナルジオグラフィック』誌や、非営利組織ナイト財団などが負担している。

報道済みの殺人事件を掘り下げる

2つ目は、すでに報道されている事件や事象について、その背景にあるものや原因などを突き止めようとする姿勢だ。

米ラジオ番組「This American Life」の制作者が2014年に始めたポッドキャスト「Serial」(昨年第2エピソードの配信終了)がその一例。1999年にボルティモア州で発生した殺人事件はすでに報道済みだったが、これを12回シリーズで配信したところ人気となり、2015年には放送界のピューリッツア賞と言われるピーボディ賞を受賞している。

英国のディレイド・グラティフィケーションが発行する雑誌はデザインが凝っている

英国では、「ディレイド・グラティフィケーション」(Delayed Gratification)が、デジタル時代のスロージャーナリズムの典型として注目されている。「ディレイド・グラティフィケーション」の意味は「目先の満足に惑わされず、後の報酬を待つこと」。

凝った名称だが、一瞬を競ってニュースを出していくよりも、「文脈、分析、専門家の意見を出す」ことで読者に満足してもらうことを考えた。

季刊で雑誌(紙版と電子版、毎回480ページ)を出し、年間購読料は36ポンド(約5000円)。約20本の記事が入る。雑誌『タイムアウト』にいたロブ・オーチャード氏とマーカス・ウェブ氏が共同創業者だ。最新号は今年3月発売。内容的には、ドナルド・トランプ氏が米大統領に就任したことや、シリアのアレッポで起きた住民避難など、昨年10~12月に起きたことを掘り下げてレポートしている。

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