ただ、一般の国民からすると、法人税と消費税を税務署に納めるということは日常、無関係の立場である。むしろ、所得税や住民税にかかわること、中でも年末調整の煩わしさのほうが切実だ。家族構成や配偶者の所得を勤め先に届け出なければならない。住宅ローンを抱えていれば、住宅ローンの残高も届け出なければならない。勤め先はプライバシーに配慮してはいるだろうが、年末調整という年1回のイベントは、勤め先に知られたくないことを知らせなければならない可能性を含んだものである。
やはり当連載の拙稿「フランスで初めて『源泉徴収』が始まる衝撃」でも記したように、フランスの企業ではそうした問題意識から源泉徴収制度に反対していた(掲載後の展開ではマクロン新大統領の判断によってフランスの源泉徴収制度の開始は2019年1月に延期された)。
医療費控除のため、税務署まで赴く手間暇
おまけに、病気やけがで思いがけず医療費が多くかかった年には、医療費を費やした分だけ所得税などが減免される制度(医療費控除)があることから、その恩恵を受けようとすると年末調整ではできず、税務署にわざわざ赴いて確定申告をしなければならない。年末調整で手続きが済むのは、住宅ローン控除や生命保険料控除などまでで、医療費控除は年末調整でできてもよさそうなのに、税務署まで足を運んで確定申告をしなければならないのが現状だ。
ならば、納税者の省力化を図るべく、そうした手間が省けるように、税務当局が当該機関から情報を共有し、確定申告をしなくても済むような仕組みに改めることだ。そうすれば多くの国民・納税者がその恩恵を受けられる。年末調整の省力化なくして、わが国のICTの活用を含めた、納税者利便の向上は貫徹しない。
今後は「省力化」をキーワードに、われわれ納税者の利便性向上に取り組むべきである。
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