成功者の著書をまねしても「成功しない」理由

疑う姿勢を持ち確率を上げたほうが合理的だ

こうした考え方はニュートン力学の考え方です。「時速50キロメートルで走る車は、1時間走れば必ず50キロメートル進む」といった具合です。これは誰が車を運転しても必ず同じ結果が出ます。

こうした理論が働くのは机上や車といったモノの世界だけです。私たちの思考はモノではありません。ニュートン力学の枠組みで成功方法を考えること自体、そもそもナンセンスなのです。

「成功者分析型」の自己啓発本の問題点

もう1つの典型的な成功本の形式は、誰かの成功を観察・分析し、その極意を見いだすものです。たとえば成功者100人の行動を注意深く分析したり、共通点を見つけ出そうとしたりする方法です。

一見有効に見えるこのアプローチには、見落とされがちな罠(わな)があります。それは、「観察できることしか考慮されていない」ということです。

たとえば、ある人がレストランでサラダを注文しても、注文の理由は千差万別です。菜食主義の人もいれば、医師に指示されているから仕方なく注文した人もいるし、二日酔いで食欲がないから、という人だっています。どれも目に見える行動は同じですが、理由が違います。「二日酔いのときにサラダを食べる」という選択肢1つとっても、過去の経験や知識すべてが反映されるのです。

成功者の7割はサラダを毎日必ず食べているというデータがあったとしても、サラダを毎日食べれば成功者になれるわけではありません。なぜなら、成功者のほとんどが糖尿病で、医師にサラダを食べるよう指示を受けているだけかもしれないからです。

大事なのは、どういった経緯でその選択肢が選ばれたのかです。結果にこだわっても、背景にある計算式は違うかもしれません。1+1も10÷5も答えは2ですが、計算式は異なります。私たち一人ひとりは別々の計算式を持っていますから、観察可能な行動や結果の組み合わせでは、本質は見えてきません。

「誰かに当てはまったことを他の誰かに当てはめる」というやり方は構造上の限界があります。にもかかわらず、ビジネスの世界では統計を取ってフレームワーク化し、それを他者にも当てはめようとする試みが現在も行われています。これは、ウィンドウズのOSをMacのパソコンにインストールするようなものです。

成功者の習慣とかクリエーティブな人の持ち物といったテーマがはやるのは、「何かをすれば何かが起きる」と信じているからにほかなりません。しかし、何かをすれば成功するとか、より創造的になれるというのは幻想です。

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