成功者の著書をまねしても「成功しない」理由 疑う姿勢を持ち確率を上げたほうが合理的だ

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科学に関する本を数冊読むと、ニュートン力学的な考え方は1世紀近くも前に取って代わられていることがわかります。科学が、それまでの考え方ではどうしても説明できない限界に直面したからです。その限界を乗り越えるために、科学の世界では新しいパラダイムが生まれました。それが量子力学です。ただ、多くの科学者が、当初は量子力学を受け入れることができませんでした。それだけ突拍子もない理論だったのです。

「絶対成功する方法」から「成功確率を上げる方法」へ

『自分が信じていることを疑う勇気』(きこ書房)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

量子力学の結論を端的に説明すると、「この世に運命はない」ということです。「神様はいるかもしれないけど、神様も何が起きるかはわからないよ」という、当時の人たちにとってはショッキングな内容でした。アルバート・アインシュタインが「それでも神はサイコロを振らない」と言ったのは、この事実を彼が受け入れられなかったためです。

アインシュタインをはじめとした科学者たちは、私たちが未来を予測できないのは手元にある情報が足りないからだと考えていました。完全な情報さえ手に入れば、人類は未来を正確に予測できると信じていたのです。

しかし、量子力学によって、未来を正確に予測することは、どんな人間でも不可能だと示されました。それは、私たちが持っている情報が足りないからではなく、自然の根本的な性質が偶然に左右されるためです。どれだけ完璧な情報をもっても、未来は確定できないのです。

では、この世界は何もかも偶然次第で、本を読んで努力しても意味がないのか……というと、そうではありません。マックス・ボルンという科学者は「粒子そのものの動きは確率の法則に従うが、確率そのものの変化には因果関係がある」と説明しています。つまり 「何をするにも確率に左右されるけど、その確率は私たちの考え方や行動で変化する」ということです。

これまでの自己啓発本で提示されているような「絶対に成功する法則を探すパラダイム」よりも、「成功する確率を上昇させるパラダイム」へシフトしたほうが合理的でしょう。これはニュートン力学に従った直線的な考え方から、量子力学に従った多面的な考え方への方向転換ともいえます。そのために必要なのが、たとえ著名な成功者の書いた本でも、その内容を鵜呑みにせずに咀嚼(そしゃく)して自分の糧にする、疑う姿勢なのです。

長谷川 雅彬 ブランディング戦略アドバイザー

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はせがわ まさあき / Masaaki Hasegawa

立教大学経営学部卒。在学中は総合格闘技のプロの試合にも出場し、卒業後は大和証券キャピタルマーケッツ(現・大和証券)で投資ストラテジストとして勤務。その後、スペインのIE Universityで日本人初のVisual Media Communication修士号を取得。イスラエルのソフトウェア会社でチーフエバンジェリストとして勤務。2014年よりスペインに戻りコンサルや執筆活動を開始し、スペインとアメリカで書籍を出版する。現在はスペイントップの戦略デザインファームErretresでアドバイザーを務め、大学や国際的なカンファレスでの講演を行うほか、自身の持つ創造性に関するオンラインコースでは120各国に4000人以上の受講者を持つ。

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