カタールは前述のように、陸ではサウジアラビアとのみつながっており、断交前は食料品、日用品をはじめ、あらゆる物資をサウジ経由で調達していた。断交を機に、カタールの商店では買い付け騒ぎが起きたほか、物資の調達は今後、空路と海路に頼らざるをえない状況となっており、物価の上昇は避けられない。
ドーハの諸物価はもともと高く、空港での乗り継ぎ中に何かを食べるにもその値段の高さに二の足を踏む状況だった。今後、物資の供給不足などでその価格がさらに上がることだろう。
カタールでは2022年にサッカーW杯の開催が決まっているが、「建築資材が調達できないなどの理由で施設建設が間に合わないのでは」という懸念も高まっている。外国人観光客数は2013年から毎年2割近くの増加と右肩上がりで伸びており、2022年には370万人と昨年の2倍強という目標を立てているが、この数字の達成も危ぶまれている。
「乗り継ぎ需要」で経営を成り立たせてきたが…
中東の航空会社は、自国を目的地としない旅行客も積極的に取り込み「乗り継ぎ需要」で経営を成り立たせてきたという経緯がある。ドバイとエミレーツ航空のコンビネーションはその好例と言えるだろう。
ドバイは観光開発を進める一方、「乗り継ぎのついでに街にも滞在を」とエミレーツ航空は無料あるいは格安価格で宿泊プランを提供。「すぐに乗り継がないでドバイに泊まる客」がついでに観光を楽しむという図式が確立、それにより航空会社の利用客も増えるという好循環を生んできた。
しかし、今回のような急激な状況変化に耐えるには相当な体力が必要そうだ。前述の専門家、ストリックランド氏はカタールについて「世界有数のハブを構築するため、豪華な空港や最新鋭の機材をそろえるための投資を進めていた」と指摘。「しかし、断交により上空通過が禁止されたことにより、ルート変更で飛行時間が延びるだけでなく、スケジュールが狂ってシームレスな乗り継ぎができなくなる」とビジネスモデルの崩壊を懸念する。
中東経由のルートは日本の旅行客にとって、よりお得に欧州やアフリカに飛べる手段となっている。遠い国での外交問題が引き金となり、日本からの渡航コストがふくらむのは困りものだ。一時的な問題として解決するのか、それとも長期化するのか。今後の展開を見守りたい。
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