経済を「感じる力」を鍛えると全体感が見える 1人カラオケ普及の影響を知っていますか?

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一部の事業者が飲食持ち込み可としているのは、とにかくたくさんの顧客に利用してもらいたいからです。客単価が減少している以上、金額ではなく客数で稼ぐという形にシフトしなければ、同じ売上高は維持できません。

このように、市場規模が変わらなくても、消費者のおカネの使い方が変わってくると、企業の経営にも大きな変化が生じることになります。こうした変化は、あらゆる業界で発生しているはずであり、多くの企業がつねに姿を変え、そこで働く人たちの生活も変化させています。このように小さな気づきを積み重ねていけば、やがて社会全体の大きな動きも理解できるようになるでしょう。

「感じる力」さえ身に付けていれば!

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「直感」や「気づき」を大事にすると、自分だけでなく社会全体の問題点も見えてきます。これは自身のキャリアプランの設計や資産運用などにもよい影響を与えることになるでしょう。

漫然と与えられたものを受け入れ、受動的に生きるよりも、主体的に考え、自分の価値観に基づいて物事を決める人生のほうが何倍も充実しています。そして多くの人が、前向きに、主体的に行動するようになれば、経済全体にもよい影響を与え、最終的には自分たちの利益として戻ってきます。

今の日本は不況が続いており、将来にあまり期待が持てない状態です。しかし経済というものは人々の心理に影響を受けるものです。人口減少など避けることのできないマイナス要因はありますが、気持ちの持ち方次第で経済は大きく変わるのです。これは発展途上国から成熟国へのシフトが進んだ日本ではなおさらのことです。

一人ひとりが経済を「感じ取り」、主体的に行動するということは、何よりの景気拡大策になります。つまり、本当の意味で日本経済の処方箋を書けるのは、政府でも経済学者でもなく私たち自身なのです。

これからの10年は、経済環境の変化に加え、人工知能の台頭などテクノロジーの驚異的な進歩という荒波も押し寄せます。しかし変化が大きいときはチャンスでもあります。経済を感じる力さえ身に付けていれば、どんな時代でも恐れる必要はありません。

加谷 珪一 経済評論家

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かや けいいち / Keiichi Kaya

仙台市生まれ。1993年東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在、「ニューズウィーク(日本版本誌)」「現代ビジネス」など多くの媒体で連載を持つほか、テレビやラジオで解説者やコメンテーターを務める。著書に『新富裕層の研究』(祥伝社新書)、『戦争の値段』(祥伝社黄金文庫)、『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『縮小ニッポンの再興戦略』(マガジンハウス新書)など多数。オフィシャルサイト http://k-kaya.com/

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