中国が消えた「アジア安全保障会議」の舞台裏

どうして中国は大物を送らなかったのか

中国の存在感が低下した分、結果的に、今回の対話では、米国の動向が注目されることになった。とくに開幕直前にトランプ米大統領がパリ協定(2015年12月に採択された気候変動抑制に関する多国間協定)から脱退するという大胆な方針を表明したこともあり、いったい米国がアジア太平洋地域で軍事プレゼンスを維持するのかどうかが大きな注目を集めた。

個別テーマとしては、北朝鮮問題が突出したほか、5月末から続くフィリピン南部での過激派掃討作戦を念頭に、東南アジアにおけるテロの脅威について活発な意見交換が行われた。そういう事情もあり、南シナ海問題は相対的に小さな話題にとどまった。

中国とシンガポールの関係はトラブル続き

シンガポール現地の大使館員に聞いてみると、IISSによる説明を額面通り受け取る一方で、今回の中国の消極姿勢を、トラブル続きの中国・シンガポール関係の文脈で語る人もいた。昨年以来、ASEAN外相会談における南シナ海についての扱い、シンガポール軍装甲車差し押さえ事件などで両国間には隙間風がいていた。

最近では、5月14〜15日に北京で開かれた一帯一路サミットにシンガポールのリー・シェンロン首相が招待されないという奇妙な事態が発生した。現地でこのことを詳しく取材した記者の解説によると、他の東南アジアの首脳が自発的に参加を表明したにもかかわらず、シンガポール側が参加を決めるにあたって正式な招待状を要求したことからすれ違いが生じたらしい。

ちなみに、中国外交部のスポークスパーソンは6月1日、この関係悪化説を明確に否定し、仕事の都合上による決定と述べている。

今年のシャングリラでの中国「不在」は、中長期的に、中国が自国主催で性質の似た香山フォーラムへの傾注を意味するのかもしれない。このあたりは、中国が来年のシャングリラへ本当に重量級を送るのかどうかを待つしかなさそうだ。

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